経営者の“先読み”が勝利を呼んだ…相続税評価を下げるために持株比率を「15%未満」へ。オーナー社長でも配当還元方式が認められた“用意周到”なスキーム【税理士が判例解説】

経営者の“先読み”が勝利を呼んだ…相続税評価を下げるために持株比率を「15%未満」へ。オーナー社長でも配当還元方式が認められた“用意周到”なスキーム【税理士が判例解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

通常、オーナー社長(オーナー経営者)は持株比率が高く、同族株主のいる会社の場合、配当還元方式は使えないのが定石です。株式評価には「配当還元方式」、「類似業種価額方式」、「純資産価額方式」の3つがありますが、一般的には、純資産価額方式または類似業種価額方式が高く、配当還元方式が低くなります。そこで、本来は類似業種価額方式による評価をすべき会社のオーナー株主が持株比率を15%未満にする操作を行って配当還元方式で評価し、裁判でもオーナー株主が勝訴した裁判例が存在します。本記事では、相続税評価における「株式」の評価方法の基本と実務上の注意点を、税理士がくわしく解説します。 

裁判所の判断

吉田課長「裁判所はどう判断したのですか?」

 

次の(1)、(2)の理由を示したうえで、「仮にC社やB社が、A社や原告と同じ内容の議決権を行使することに同意していたとしても、評価会社であるA社の議決権割合を判定する際に、C社やB社の議決権をA社や原告が持っているものとみなすことはできない」と判断し、税務署長の主張を退けました。

 

(1)同意者の規定は、ある法人が「法人である同族関係者」に当たるかどうかを判断するために設けられた規定である。

(2)同意者の規定は、前掲5.(2)①イ、ロの議決権割合が30%以上、50%超の判定に用いることはできない。

 

吉田課長「すばらしい相続税対策でしたね」

 

この裁判における納税者の勝因としては、次の(1)~(3)が考えられます。

 

(1)相続税法の規定を精緻に読み込んで、相続税対策をしたこと。

(2)甲社長が元気なうちから、相続(税)を見据えた行動を起こしていたこと。たとえば、一部のA社株式の移転先として約3年前にB社を設立していたこと。

(3)A社株式の評価を配当還元方式で行えるようにするため、同社株式の一部を甲一族以外のB社に移転したこと。

 

 

なお、経営の視点からみると、甲一族のA社株式の持株割合は減少しました。しかし、A社株式を移転したB社に対して事実上の支配力を持つことで、A社に対する経営権は引き続き確保しています。

 

 

多田 雄司
税理士

 

 

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