(※写真はイメージです/PIXTA)

多くのシニア世帯が直面している「年金生活の赤字」という現実。日々のやりくりのなかで、子どもの存在やその収入を、無意識のうちに自分たちの老後の「命綱」にしてはいないでしょうか。本記事では佐藤正夫さん(仮名)の事例とともに、FP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が老後設計における重要な視点について解説します。※本記事は実話をベースに構成していますが、プライバシー保護のため、個人名や団体名、具体的な状況の一部を変更しています。

家族3人で成り立っていた家計

佐藤正夫さん(67歳)は、妻の和子さん(67歳)、一人娘の美咲さん(38歳)と市営住宅で暮らしていました。

 

夫婦はすでに現役を退いて年金生活に入っており、二人の年金収入は月21万円ほど。若いころからあまり貯蓄ができず、預貯金は約200万円しかありません。娘の美咲さんは派遣社員として働いており、年収は300万円に届きませんが、家族3人で生活することで家計を維持できていました。

 

昔から恋愛、結婚に消極的だった美咲さんでしたが、派遣先で出会った男性と交際を重ね、このたび結婚する運びとなりました。

 

「ようやく安心できる」

 

そう胸をなでおろしたのは、美咲さん本人だけではありません。正夫さん夫婦もまた、心の底から安堵していました。

「幸せになってね」涙の結婚式が一変した瞬間

結婚式当日、バージンロードを歩く娘をみて夫婦は号泣し、披露宴も終盤へ。「花嫁から親への手紙」が始まり、美咲さんは涙ぐみながら、ゆっくりと読みはじめました。

 

会場中が感動するなか、その手紙の一節が、正夫さん夫婦の人生を大きく変えることになろうとは、誰も想像していなかったのです。

 

「お父さん、お母さん。これからは離れて暮らすことになりますが、私たち二人で力を合わせて生きていきます。どうか温かく見守ってください」

 

世間一般の結婚式でよく耳にするような花嫁の手紙でしたが、その言葉がスピーカーから流れた瞬間、和子さんは開いた口が塞がらなくなりました。正夫さんも思わず「えっ……一緒に暮らすんじゃないの?」と、肉声で声を上げてしまったのです。

 

披露宴会場は奇妙な沈黙に包まれました。美咲さんも動揺を隠せない様子でなんとか手紙を読み続けましたが、正夫さん夫婦の表情はみるみる険しくなっていきます。

 

 

 

次ページ夫婦が結婚後も同居と、思い込んだワケ

※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。

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