築40年の木造家屋でも相続税がかかる謎…所得税は“実質価値ゼロ”なのに相続税は「最低20%」になる、一見不合理な「固定資産税ルール」【税理士が解説】

築40年の木造家屋でも相続税がかかる謎…所得税は“実質価値ゼロ”なのに相続税は「最低20%」になる、一見不合理な「固定資産税ルール」【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

故人から不動産を相続した場合、相続税評価上は家屋と土地を別々の財産として評価します。「家屋」の評価は一見簡単そうですが、実務で知っておくべき問題点があります。そこで本記事では、家屋とその周辺設備(附帯設備)の「価値」をどのように評価するか、その評価方法と実務上の注意点を税理士がくわしく解説します。

〈登場人物〉

吉田課長:A社で働く課長。3人きょうだい(吉田さん、弟、妹)の長男で、2人の子を持つ。税理士とは業務上のやり取りがある。

家屋の相続税評価でカギとなる「固定資産税評価額」

吉田課長「相続税では、家屋をどう評価するんでしょうか?」

 

今回は、相続税における家屋と、これに関連する財産の評価について解説します。まずは下記1.(1)をみてください。

 

1.家屋

(1)評価単位(財産評価基本通達(以下「財産評価通達」88)

家屋の価額は、原則として、1棟の家屋ごとに評価する。

 

(2)評価(財産評価通達89)

その家屋の固定資産税評価額(市町村が作成した固定資産税の家屋課税台帳、家屋補充課税台帳に登録した基準年度の価格または比準価格)に財産評価通達の別表1に定める倍率(1.0)を掛けた金額より評価する。

 

原則として、相続税において家屋を評価する際は1棟ごとに評価します(財産評価通達88)。

 

そして、家屋の相続税評価額は下記のように計算されます。

 

相続税評価額=固定資産税評価額×1.0
※ 財産評価通達の別表1に定められている。

 

吉田課長「なるほど。1.0ということは、家の相続税評価額は固定資産税評価額をそのまま使うということですね」

 

そのとおりです。この「固定資産税評価額」とは、市町村が固定資産税を課税するために家屋課税台帳・家屋補充課税台帳に登録した基準年度の価格または比準価格のことです(財産評価通達89、上記1.(2))。

 

吉田課長「叔父が、『自宅は木造で築40年を超えているのに、固定資産税の評価額が下がらない』と嘆いていたことがあります」

 

そうなんですね。たしかに、家屋の価値の下がり方(経年減点補正率)は、木造・鉄骨・鉄筋コンクリートなど構造によって異なり、一般に木造はもっとも価値が下がりやすいとされています。

 

また、築年数が古くなるほど評価額が下がりそうなイメージがありますよね。実際、所得税の計算に用いる木造家屋の耐用年数は最長24年(住宅は22年)です。所得税では、取得価額の5%(平成19年4月1日以後の取得分は1円)を残して減価償却します(所得税法施行令134条1項)。

 

したがって、吉田課長の叔父さまの家屋は、所得税上の価値は1円になります。

 

しかし、家屋の固定資産税評価額は、築年数がどれほど古くても、一定の水準までしか下がらない仕組みになっています。そして、この固定資産税評価額は相続税や贈与税の家屋評価にもそのまま使われます。

 

そのため、評価額が下がらないと、固定資産税だけでなく相続税や贈与税の負担にも影響します。

 

固定資産税の評価額は、固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号)の定めにより、下記のように求められます。

 

再建築価額×経年減点補正率(最終残価率)=固定資産税評価額

 

「再建築価額」とは、同じ家を新品として建て直した場合に、いくらかかるかという想定建築費のこと。また「最終残価率」とは、家屋の価値がどれだけ古くなっても、評価額がそれ以上下がらないと定められている“下限の割合”を指します。 

 

この最終残価率は、家屋の種類にかかわらず、最低「0.20」と定められています(固定資産評価基準別表第9、13)。つまり、築40年を超えた木造家屋でも、固定資産税評価額は再建築価額の20%を下回ることはない、すなわち20%未満には引き下げられないということです。

 

吉田課長「このルールについて、誰も文句を言わないのですか?」

 

実は、異議を唱えた人がいました(平成26年10月31札幌地裁判決、平成27年4月17日札幌高裁判決)。贈与税に関する事案です。

 

 

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