「老後は静かに暮らしたい」…東京を離れた夫婦の選択
俊夫さん(仮名・67歳)と妻の佳代子さん(仮名・66歳)は、俊夫さんの定年を機に東京を離れました。夫婦の年金収入は月24万円ほど。都内のマンションは住宅ローンを完済していましたが、管理費や修繕積立金、固定資産税に加え、日々の生活費も高く、「このまま東京で暮らし続ける必要があるのか」と考えるようになったのです。
移住先に選んだのは、以前から旅行で訪れていた地方都市でした。自然が近く、駅前にはスーパーや病院、市役所の出張所もあります。完全な田舎ではなく、車がなくても最低限の生活が成り立つことを確認したうえで、夫婦は都内のマンションを売却し、駅から徒歩圏内の中古マンションへ住み替えました。
「海の見える一軒家にも憧れました。でも、年を取ってから車がないと暮らせない場所は不安でした」
夫婦が重視したのは暮らしやすさでした。通院できる病院があるか、冬場の気候は厳しすぎないか、買い物に困らないか。移住前には何度も現地を訪れ、平日と休日の様子、バスの本数、医療機関までの距離を確認しました。
総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では、可処分所得約22.2万円に対し、消費支出は約26.4万円となっており、平均で毎月約4.2万円の不足が生じています。俊夫さん夫婦も、年金月24万円だけで大きな余裕があるわけではありません。しかし住居関連費が下がったことで、毎月の赤字幅は東京時代より小さくなりました。
生活も少しずつ変わりました。外食は減りましたが、地元の直売所で野菜や魚を買い、家でゆっくり食事をする時間が増えました。東京にいた頃は、休日でも混雑を避けるため外出をためらっていましたが、今は近くの川沿いを散歩し、図書館や温泉施設へ出かけることが日課になっています。
「ぜいたくではないけれど、落ち着いた毎日を過ごせています」
