(※写真はイメージです/PIXTA)

親と同居する未婚の子どもは決して珍しくありません。生活費を分担できる安心感がある一方で、親の高齢化が進むにつれて関係性が変化し、負担が一方に偏ることもあります。親を支えたい気持ちと、自分自身の人生を守りたい気持ち。その間で苦しむ人は少なくありません。

母と二人暮らしを続けてきた独身女性

奈緒さん(仮名・55歳)は都内の企業で働く会社員です。手取りベースで月収は約42万円。結婚はしておらず、78歳の母・文子さん(仮名)と二人暮らしを続けてきました。

 

父は10年前に他界しています。

 

文子さんの年金は月14万円ほど。持ち家で住宅ローンはありませんでしたが、固定資産税や修繕費、医療費などを考えると、年金だけで余裕のある暮らしができるわけではありません。

 

「お母さん一人じゃ心配だから」

 

奈緒さんは40代前半の頃からそう考え、実家で暮らし続けてきました。

 

もともとは数年のつもりでした。ところが父が亡くなり、母が一人になると状況は変わります。

 

電球交換や庭木の手入れ、役所の手続き、病院の付き添い。最初は小さな手助けだったものが、年々増えていきました。

 

平日は会社へ行き、帰宅後は買い物や夕食の準備をする。休日は母を病院へ連れて行き、家の修繕業者とのやり取りを行う。

 

友人から旅行に誘われても断ることが増えました。

 

「お母さんを置いていけないから」

 

そう説明すると、友人たちは理解してくれました。しかし奈緒さん自身は、少しずつ疲れを感じ始めていました。

 

母との関係が悪かったわけではありません。

 

むしろ仲は良い方でした。しかし関係が良好だったからこそ、奈緒さんは母との距離の取り方に悩むようになります。

 

ある日、会社の同僚から「奈緒さん、自分の人生は考えないの?」と声をかけられたことがありました。その場では笑って受け流したものの、その言葉は思いのほか心に残り、ふと立ち止まって自分自身の将来を考えるきっかけになったといいます。

 

気づけば55歳になり、定年後の生活も現実味を帯びてくるなかで、これまで母のことを優先してきた一方、自分の老後については十分に考えられていなかったのではないかという思いが強くなっていきました。

 

内閣府『令和7年版高齢社会白書』では、65歳以上の一人暮らしの人は増加しており、令和7年時点で65歳以上人口に占める一人暮らしの割合は男性18.3%、女性25.4%と推計されています。

 

そんな中、状況を大きく変える出来事が起きます。文子さんが軽い転倒を繰り返すようになったのです。

 

幸い大きなけがはありませんでした。しかし、そのたびに奈緒さんは仕事を早退し、病院へ駆けつけました。

 

さらに母は不安からか、奈緒さんへの依存を強めていきます。

 

「今日は何時に帰るの?」

「土曜日は家にいるわよね?」

「旅行なんて行かないでしょう?」

 

悪気はありませんが、奈緒さんは少しずつ息苦しさを感じるようになっていきました。

 

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