経営者の“先読み”が勝利を呼んだ…相続税評価を下げるために持株比率を「15%未満」へ。オーナー社長でも配当還元方式が認められた“用意周到”なスキーム【税理士が判例解説】

経営者の“先読み”が勝利を呼んだ…相続税評価を下げるために持株比率を「15%未満」へ。オーナー社長でも配当還元方式が認められた“用意周到”なスキーム【税理士が判例解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

通常、オーナー社長(オーナー経営者)は持株比率が高く、同族株主のいる会社の場合、配当還元方式は使えないのが定石です。株式評価には「配当還元方式」、「類似業種価額方式」、「純資産価額方式」の3つがありますが、一般的には、純資産価額方式または類似業種価額方式が高く、配当還元方式が低くなります。そこで、本来は類似業種価額方式による評価をすべき会社のオーナー株主が持株比率を15%未満にする操作を行って配当還元方式で評価し、裁判でもオーナー株主が勝訴した裁判例が存在します。本記事では、相続税評価における「株式」の評価方法の基本と実務上の注意点を、税理士がくわしく解説します。 

争点となった「同族株主」の判定

吉田課長「甲社長がA社株式を譲渡した目的はなんですか?」

 

甲社長とその親族(甲一族)が保有していた、将来、値上がりする可能性のあるA社株式の一部を相続財産から除外し、さらに残りのA社株式の評価額を引き下げることが目的でした。

 

A社の株主構成は前掲6.(3)のとおりで、甲一族の議決権割合は、B社へ株式を譲渡する前は「22.79%」でした。

 

しかし、譲渡後は「14.91%」まで下がりました。つまり、配当還元方式が使える「同族株主のいない会社」の要件である議決権割合「15.00%」未満の状態になったということです。その結果、相続税の申告ではA社株式に「配当還元方式」が適用されました(前掲5.(2)②)。

 

吉田課長「税務署長の判断は?」

 

税務署長は、配当還元方式による評価額を認めず、類似業種比準価額による評価額へ増額修正をする更正を行いました。そのため、この件は裁判に発展しました。

 

税務署長は、甲一族(持株割合14.91%)、B社(同7.88%)、C社(同24.18%)が同じ同族株主のグループに属するため(合計46.97%≧30%)、A社は「同族株主のいる会社」(前掲5.(2)①イ)に該当し、甲一族は同族株主に当たると主張しました。

 

吉田課長「法人である同族関係者の要件は、その法人の株式の50%を超えて所有している必要があるのでは?」

 

そのとおりです。B社の株主には甲一族は含まれていません。また、C社における甲一族の持株割合も32.6%にとどまっています。したがって、両社とも「株式の50%超を所有している」という要件を満たしていません(前掲5.(3)②)。

 

そこで税務署長は、B社とC社について、次の(1)〜(3)に該当するため、甲社長が相続開始時に所有していたA社株式(持株割合8.00%)は「同族株主が取得した株式」に当たる、という別の主張をしました。

 

(1)前掲5.(3)③の「同意者の規定」に該当する。

(2)それゆえ、前掲5.(3)②の「他の会社を支配している場合」に該当する。

(3)したがって、B社とC社は法人である同族関係者に該当する。

 

 

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