「もうエコノミーには乗らない」退職後に決めた旅行のルール
成田空港から自宅へ戻った日の夜、孝志さん(仮名・69歳)は旅行中の支払いを確認していました。
妻の由紀子さん(仮名・67歳)と出かけたのは、10日間のヨーロッパ旅行。航空券は往復ともビジネスクラスで、ホテルも立地の良い上級クラスを選びました。
「今回はいくらだった?」
由紀子さんに聞かれ、孝志さんはスマートフォンの電卓を何度かたたき直しました。
「……全部で170万円くらいかな」
夫婦2人分とはいえ、航空券だけで100万円近く。宿泊費や食事代、現地での移動費などを合わせると、予想より大きな金額になっていました。
孝志さんは大学卒業後から同じ会社に勤め、管理職を経て65歳で退職しました。住宅ローンはすでに完済。退職金などを含め、退職時に約6,800万円あった金融資産は、現在約6,300万円です。夫婦には公的年金もあり、普段の生活に困っているわけではありません。
退職したとき、孝志さんは由紀子さんにこう宣言していました。
「これから海外へ行くときは、ビジネスクラスしか乗らない。若いころみたいに我慢する必要はないだろう」
現役時代は休暇が取りづらく、海外旅行は数年に一度。長時間のフライトをエコノミークラスで過ごし、「退職したら絶対に楽な席で旅行する」と決めていたのです。
最初の旅行はハワイ、その次はシンガポール。今回が3回目でした。
ところが帰国後、これまでの旅行代を合計してみると、3回で400万円を超えていました。
「旅行だけでこのペースかと思ったら、急に気になってきたんです」
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、月平均の実収入が25万4,395円、可処分所得が22万1,544円であるのに対し、消費支出は26万3,979円となっています。平均では可処分所得を消費支出が上回っており、貯蓄などを取り崩しながら生活する世帯もあることがうかがえます。
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