内閣府『国民生活に関する世論調査』によると、充実感を覚えるときとして「家族団らんの時」を挙げる60代は約半数に上り、高齢者にとっても大きな喜びであることがわかります。特に「目に入れても痛くない」といわれるように、孫を激愛する祖父母は多いもの。しかし、ときには、その愛らしい存在を拒否してしまうケースもあるそうです。そこにはどのような事情があるのでしょうか。ある女性のケースをみていきます。
「もう来なくていいわよ」年金月16万円・68歳祖母、初孫の誕生会を拒否。45歳息子が絶句した「まさかの理由」 ※写真はイメージです/PIXTA

忙しくても行くよ、それが私にできる親孝行だから

東京都内で一人暮らしをする山岸和子さん(68歳・仮名)。毎週金曜日の夜、「明日、お昼ごろに行くね」というメッセージを受け取り、冷蔵庫の中身を確認する、というのが習慣になっていました。

 

息子の良一さん(45歳・仮名)と妻、そして4歳になる初孫が毎週末に訪ねてくるのです。

 

「そんなに頻繁に来なくてもいいのよ。忙しいでしょ」

「忙しくても行くよ。俺ができる親孝行だもの」

 

そう言ってくれる良一さんの言葉は、当初は心から嬉しかったといいます。

 

「かわいい孫に会えるのですから、嬉しくないわけがありません」

 

孫に「おばあちゃん」と呼ばれるだけで自然と笑顔になり、写真を何枚も撮る。スマートフォンの待ち受けは孫の写真。良一さん夫婦も「お母さんは一人だから寂しいでしょう」「孫と過ごせば元気になるよ」と口をそろえていました。本人たちも、それが一番の親孝行だと信じていたようです。だから昼食も夕食も実家で食べ、時には泊まっていくことも、親孝行だと思っていたのです。

 

「母さんのご飯が世界で一番おいしいから。本当、幸せ」

 

その言葉を聞くたび、和子さんは「そう」と笑って台所へ向かうのです。

 

「そんなに頻繁に来ると、お金がかかって大変でしょう」と、心配をしてくれる友人もいます。確かに、孫が生まれ、頻繁に家族で来てくれるようになってから、食費はかさむようになりました。50代のときに夫を亡くして、長らく一人暮らし。食事は自炊が基本で、外食することも、出来合いを買ってくることもほとんどありません。1人であれば月1万円以下で何とかなりました。

 

しかし今はそういうわけにはいきません。せっかく一家で来てくれるのですから、適当なものをつくるわけにはいきません。毎週、食材を買い込み、腕をふるいます。自分ひとりであれば見切れ品を買いますが、息子一家が来てくれるとなると、そうもいかないのです。結局、1回のもてなしあたり7,000~8,000円ほどの出費。1ヵ月3万円ほどになります。

 

月4回で約3万円。それに対し、和子さんが受け取る年金は月16万円。手取りにすると、15万円を切ります。そこから毎年の固定資産税の積立金、光熱・通信費などの固定費を払い、残ったお金で食費や医療費などを払っていくと、ほとんど何も残らないといいます。

 

「パート代がないと、年金だけではやっていけませんよ」

 

今も続けるスーパーのパートは、週5で時給は1,120円。1ヵ月で年金と同じくらいの給与を得ることができるといいます。

 

「将来、孫にいくらかかるかわからないから。頼られたときにちゃんと払えるように、ほとんど貯金しています」

 

内閣府『国民生活に関する世論調査』によると、「充実感を覚えるとき」として「家族団らんの時」と回答した人は全体で47.3%、年代別に見ても60代で47.0%、70歳以上で33.5%と高い割合を占めています。高齢者にとって家族と過ごす時間が生きがいといえることがわかるでしょう。

 

和子さんにとっても、長男一家との時間は充実したひと時だったはず。それがやがて変わっていったといいます。