(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢になってからの一人暮らしに不安を感じ、成人した子どもとの同居を考える人は少なくありません。家事や通院、住宅の管理を助けてもらえる安心感がある一方、生活費の負担や家の使い方について曖昧なまま暮らし始めると、親子関係に亀裂が入ることもあります。

「この家のことは俺に任せて」息子の言葉を信じた母

美佐子さん(仮名・73歳)は、夫を亡くしてから6年間、築38年の戸建てで一人暮らしをしていました。年金は月17万円ほど。夫の退職金などを含めた貯蓄は約3,000万円あり、住宅ローンも完済しています。

 

金銭的にすぐ困る状況ではありませんでしたが、庭の手入れや重い荷物の運搬、台風後の点検など、一人では難しいことが増えていました。

 

そんな折、45歳の一人息子・達也さん(仮名)から、勤めていた会社を退職したと連絡がありました。

 

「次の仕事を探す間、実家に戻ってもいいかな」

 

達也さんは20代で家を出して以来、長く賃貸住宅で暮らしていました。離婚後は一人暮らしで、家賃の負担も重かったといいます。

 

美佐子さんが迷っていると、達也さんはこう言いました。

 

「この家も古くなっているだろう。俺が戻れば庭も屋根も見られる。将来、母さんが入院しても家を守れるよ」

 

その言葉に、美佐子さんは安心しました。

 

「いずれ家を継ぐのはこの子なのだから、一緒に暮らすほうが合理的だと思ったんです」

 

再同居にあたり、2階の和室を達也さんの部屋にし、古くなった浴室と給湯器も交換しました。費用は合わせて約330万円。達也さんから「どうせ直すなら今のうちがいい」と勧められ、美佐子さんが全額を支払いました。

 

同居当初、達也さんは買い物に付き添い、庭木の剪定もしてくれました。生活費として毎月5万円を入れる約束もしていました。

 

ところが半年後、仕事が決まらないことを理由に、生活費の支払いが途絶えます。

 

「貯金がなくなるから、働き始めるまで待ってほしい」

 

食費や光熱費は以前より増えました。エアコンを一日中つけ、酒や総菜も美佐子さんのカードで購入します。達也さんは夜遅くまで起きているため、生活音も気になりました。

 

「庭の草、伸びているけど」

 

「仕事探しで疲れているんだよ。気になるなら業者に頼めばいいだろう」

 

家を守ってもらうはずが、庭仕事も修繕の手配も美佐子さんが続けることになったのです。

 

厚生労働省『2024(令和6)年 国民生活基礎調査』によると、65歳以上の人がいる世帯のうち、「親と未婚の子のみの世帯」は561万9,000世帯で、全体の20.4%を占めます。成人した子との同居自体は珍しくありませんが、同居によって親の経済的負担が軽くなるとは限りません。

 

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