冷蔵庫の中は空っぽ…息子が気づいた母の異変
正人さん(仮名・53歳)が母の久子さん(仮名・82歳)の家を訪れたのは、半年ぶりのことでした。
父が亡くなってから7年。久子さんは一人暮らしを続けています。年金は月約15万円で、住宅ローンを完済した持ち家に住んでいることもあり、正人さんは「ぜいたくをしなければ困ることはないだろう」と考えていました。
ところが、その日は気になることが続きました。
昼食に出てきたのは、ご飯と漬物、インスタントの味噌汁だけ。以前なら帰省するたびに煮物や刺身を用意してくれていた母です。
「今日は買い物に行かなかったの?」
「最近、あんまり食べないからね」
久子さんは笑って答えました。
夕方、正人さんが飲み物を取ろうと冷蔵庫を開けると、中には卵数個と豆腐、調味料がある程度。洗面所では、以前使っていた化粧品もほとんど見当たりませんでした。
居間のテーブルには電気料金の請求書が置かれていました。
「母さん、エアコンちゃんと使ってる?」
「もったいないから、昼間はつけないこともあるよ」
違和感を覚えた正人さんは、母に家計について尋ねました。
「年金だけで足りなくなってるの?」
「そんなことないよ。ちゃんと暮らせてるから」
しかし、話題を変えようとする母の様子が気になりました。
「母さん、何を隠しているの?」
しばらく黙っていた久子さんは、ようやく事情を話し始めました。半年前から、妹の由佳さん(仮名・49歳)に毎月5万円を渡していたのです。
由佳さんの夫の収入が減り、大学生と高校生の子どもの教育費が重なったため、「半年だけ助けてほしい」と頼まれたのが始まりでした。ところが半年が過ぎても援助は続き、入学金が必要な月には、別に30万円を渡したこともありました。
「由佳には、あなたには言わないでって言われてたの。兄妹で気まずくなったら嫌でしょう」
月15万円の年金から5万円を渡せば、残るのは10万円。久子さんは足りない分を貯蓄から補うのではなく、自分の食費や光熱費を削っていたのです。
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