(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢期の住まいを選ぶ際、段差の少なさや見守りサービスだけでなく、人とのつながりを期待する人もいます。しかし、共用施設や交流行事が充実した住まいでも、いつも誰かと過ごせるとは限りません。安心できる住環境と、寂しさを感じない暮らしは、必ずしも同じではないのです。

「ここなら一人でも安心」と選んだシニアマンション

紀子さん(仮名・73歳)は、3年前から自立した高齢者向けのシニアマンションで一人暮らしをしています。

 

夫は7年前に病気で亡くなりました。一人娘は結婚しており、電車で1時間半ほどの場所で夫と2人の子どもと暮らしています。

 

紀子さんの年金は月17万円ほどです。以前は夫と暮らした戸建てに住み続けていましたが、庭の手入れや階段の上り下りが負担になり、将来への不安を感じるようになりました。

 

「夜に体調が悪くなったら、誰にも気づいてもらえないかもしれないと思ったんです」

 

そこで自宅を売却し、その資金を使ってシニアマンションの居室を購入しました。館内はバリアフリーで、フロントには日中スタッフが常駐しています。食事を注文できるレストランや大浴場、談話室もあり、安否確認のサービスも受けられました。

 

「同じ年代の人がたくさん住んでいるなら、自然に友達もできると思いました」

 

入居直後は、体操教室や映画鑑賞会に参加しました。廊下ですれ違えば住人同士であいさつを交わし、レストランで同じテーブルになった女性と話し込むこともありました。

 

ただし、住人全員が交流を求めているわけではありません。夫婦で入居している人も多く、外出や食事を家族だけで楽しむ人もいます。紀子さんと親しくなった女性も、娘との同居を理由に1年ほどで退去しました。

 

それでも普段は、週2回の体操教室や近所への買い物があり、強い孤独を感じることはありませんでした。

 

紀子さんの気持ちが沈むのは、ゴールデンウイークや年末年始などの長い休みです。

 

連休になると、子どもの家へ泊まりに行く住人や、夫婦で旅行へ出かける人が増えます。いつもは人の出入りがあるロビーも静かになり、館内行事も休みになることがありました。

 

ある年のゴールデンウイーク、紀子さんは娘から「今年は家族で旅行するから、また別の日に会おう」と連絡を受けました。

 

「楽しんできてね」

 

そう返したものの、電話を切った後、急に部屋が広く感じられました。

 

夕方にレストランへ行くと、利用者は数人だけ。窓際の席で一人で食事をしながら、紀子さんは「ここに住めば、寂しくなくなると思っていたのに」と考えたといいます。

 

「平日は予定があります。でも、連休になると寂しくなるんです。世の中の家族がみんな集まっているように見えて、自分だけ取り残された気持ちになります」

 

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