孫の大学進学に「私も出すよ」と申し出た120万円
春を目前にしたある日、文子さん(仮名・68歳)のもとへ、息子の健太さん(仮名・43歳)から電話がありました。
「翔太、第一志望に受かったよ」
孫の翔太さん(仮名・18歳)が、希望していた私立大学に合格したという知らせでした。
「よかったじゃない。頑張ってたものね」
喜びながら話を聞いていると、健太さんが入学金や授業料の話を始めました。
健太さん夫婦は共働きですが、下には高校生の娘もいます。住宅ローンも残っており、これから数年間は教育費が重なる時期でした。
文子さんは夫を5年前に亡くし、現在は一人暮らし。年金は月約15万円で、自宅のローンはすでにありません。夫から引き継いだ預貯金もあり、生活には多少の余裕がありました。
そこで文子さんは、自分から提案しました。
「入学のときくらい、私にもお祝いさせて。120万円くらいなら出せるよ」
健太さんは最初、「そんなにいいよ」と遠慮しましたが、文子さんが何度も勧めたことで受け取ることになりました。学費として必要な時期に合わせ、文子さんが援助した金額は合計120万円でした。
文部科学省『私立大学等の令和7年度入学者に係る学生納付金等調査結果』によると、私立大学学部の初年度学生納付金等の平均は150万7,647円。内訳は授業料96万8,069円、入学料24万365円などとなっています。学部によって差はありますが、入学時にはまとまった負担が生じます。
文子さんにとって120万円は、決して小さなお金ではありません。それでも、孫のためなら惜しくないと思っていました。
ところが入学後、文子さんの心には小さな引っかかりが残りました。翔太さんからは、入学式の写真がメッセージで送られてきただけ。健太さん夫婦から改めて連絡が来ることもありませんでした。
「忙しいんだろうな」
そう思うようにしていました。
しかし数ヵ月後、健太さん一家と食事をした際、大学の話になっても、120万円の援助について誰も触れません。帰宅後、文子さんは寂しさを感じたといいます。
「大げさに感謝してほしかったわけじゃないんです。ただ『助かったよ』とか、『ありがとう』とか、その一言が欲しかっただけでした」
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