(※写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、フィデリティ投信株式会社が提供するマーケット情報『マーケットを語らず』から転載したものです。※いかなる目的であれ、当資料の一部又は全部の無断での使用・複製は固くお断りいたします。

FRBがいま金融緩和を行う「3つ」の理由…2.「財政」

FRBが利下げを急ぐ、他の理由として考えられるのは、財政のひっ迫です。

 

・米国の公的債務残高は、第2次世界大戦時並みである。

・米国の利払い費は、軍事費を上回っている。

 

[図表6]米国:連邦政府債務残高(GDP比)
[図表6]米国:連邦政府債務残高(GDP比)

 

[図表7]米国の国防費と利払い費
[図表7]米国の国防費と利払い費

 

また、[図表8]で示すとおり、米国債の償還スケジュールは今後、数年間に偏っています。現在のような債務償還のスケジュールがあるときに、高金利で借り換えを行うのは、今後の財政にさらなる悪影響を与える可能性があります。

 

[図表8]米国債の償還年限別残高
[図表8]米国債の償還年限別残高

 

こうした状況に加えて、バイデン政権は、前述のとおり、

 

・ロシア=ウクライナ戦争の戦火拡大

・イスラエル=レバノン・イラン戦争の戦線拡大

 

を支援していく模様です。継戦は、「ハリス新大統領」になったとしても同様となる可能性があります(→トランプ氏が大統領になった場合、トランプ氏は前者を終わらせるとしていますが、現時点では不透明です)

 

こうなると、すでに財政悪化が顕著な現政権としては、金融費用をできるかぎり低く抑制し、財政が持続可能であるように見せる必要があります。

 

もちろん、米国も、中央銀行であるFRBに米国債を買わせるという方法があり、米国債がデフォルトすることはありえません。ただし、インフレにつながる恐れが考えられます。

FRBがいま金融緩和を行う「3つ」の理由…3.短期金融市場

もうひとつ考えられるのは、短期金融市場のひっ迫です。

 

[図表9]をみると、FRBによる利上げに沿って、(FRBが金融政策の対象金利とする)フェデラルファンド金利に(FRBが定めるレンジのなかで)少しずつ上昇圧力が高まり、最近においては同金利が「5.25%~5.5%」のレンジの「上限」に近づいていたことがわかります。

 

[図表9]政策金利と同・誘導レンジ、およびレポ金利
[図表9]政策金利と同・誘導レンジ、およびレポ金利

 

これは、銀行が保有する資金が少しずつ減ったり、あるいは、特定の銀行に対する信用の懸念が高まり、銀行間貸出に及び腰になっている状況を示唆します。

 

実際、月末かつ四半期末にあたる9月30日には、市場から資金を調達できず、FRBから資金を調達する銀行が出ました(→商業銀行や投資銀行、ファンドなどは、規制をクリアしたり、自分たちの保有資産の見栄えをよくするために、他行への貸し付けを抑制したり、劣化した資産を一時的にバランスシートから切り離す場合があり、こうした動きが市場金利を上昇させます)

 

2019年の秋には、(無担保金利である)フェデラルファンド金利や(有担保金利である)レポ金利に上昇圧力が高まり、FRBは緊急で短期債を買い入れ、資金供給を行いました。

 

今回はこうした事態の発生を未然に防ぐために、FRBが利下げで資金需給を緩和させようとした可能性があります(→ただし、あまり効果は出ていません)

 

以上を簡単にまとめると、米国経済が「堅調」ななかでの今回の大幅な利下げは、特定の政治勢力や政府、金融機関、大企業への支援が目的であった可能性があります。

 

<<レポート全文はコチラ>>

 

重見 吉徳

フィデリティ・インスティテュート

首席研究員/マクロストラテジスト

 

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