FRBがいま金融緩和を行う「3つ」の理由…2.「財政」
FRBが利下げを急ぐ、他の理由として考えられるのは、財政のひっ迫です。
・米国の公的債務残高は、第2次世界大戦時並みである。
・米国の利払い費は、軍事費を上回っている。
また、[図表8]で示すとおり、米国債の償還スケジュールは今後、数年間に偏っています。現在のような債務償還のスケジュールがあるときに、高金利で借り換えを行うのは、今後の財政にさらなる悪影響を与える可能性があります。
こうした状況に加えて、バイデン政権は、前述のとおり、
・ロシア=ウクライナ戦争の戦火拡大
・イスラエル=レバノン・イラン戦争の戦線拡大
を支援していく模様です。継戦は、「ハリス新大統領」になったとしても同様となる可能性があります(→トランプ氏が大統領になった場合、トランプ氏は前者を終わらせるとしていますが、現時点では不透明です)。
こうなると、すでに財政悪化が顕著な現政権としては、金融費用をできるかぎり低く抑制し、財政が持続可能であるように見せる必要があります。
もちろん、米国も、中央銀行であるFRBに米国債を買わせるという方法があり、米国債がデフォルトすることはありえません。ただし、インフレにつながる恐れが考えられます。
FRBがいま金融緩和を行う「3つ」の理由…3.短期金融市場
もうひとつ考えられるのは、短期金融市場のひっ迫です。
[図表9]をみると、FRBによる利上げに沿って、(FRBが金融政策の対象金利とする)フェデラルファンド金利に(FRBが定めるレンジのなかで)少しずつ上昇圧力が高まり、最近においては同金利が「5.25%~5.5%」のレンジの「上限」に近づいていたことがわかります。
これは、銀行が保有する資金が少しずつ減ったり、あるいは、特定の銀行に対する信用の懸念が高まり、銀行間貸出に及び腰になっている状況を示唆します。
実際、月末かつ四半期末にあたる9月30日には、市場から資金を調達できず、FRBから資金を調達する銀行が出ました(→商業銀行や投資銀行、ファンドなどは、規制をクリアしたり、自分たちの保有資産の見栄えをよくするために、他行への貸し付けを抑制したり、劣化した資産を一時的にバランスシートから切り離す場合があり、こうした動きが市場金利を上昇させます)。
2019年の秋には、(無担保金利である)フェデラルファンド金利や(有担保金利である)レポ金利に上昇圧力が高まり、FRBは緊急で短期債を買い入れ、資金供給を行いました。
今回はこうした事態の発生を未然に防ぐために、FRBが利下げで資金需給を緩和させようとした可能性があります(→ただし、あまり効果は出ていません)。
以上を簡単にまとめると、米国経済が「堅調」ななかでの今回の大幅な利下げは、特定の政治勢力や政府、金融機関、大企業への支援が目的であった可能性があります。
重見 吉徳
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