FRBがいま金融緩和を行った「3つ」の理由…1.「政治」
たとえば、米大統領選挙の半年ほど前から利下げを開始するならともかく、選挙前の直前のFOMCでの利下げ開始であり、しかも、景気は、パウエル議長自身が「堅調」と述べているわけですから、現在の経済状態に対して、「唐突かつ、整合性が取れない利下げ」です。
しかも、今回の「0.5%」という利下げ幅は、金融危機時に相当するような「インパクトのある」金融緩和です。また、年内さらに0.5%、来年以降1.5%と、すべて合わせて2.5%の利下げを有権者に「予見させる」ことになりました。言い換えれば、FRBは有権者に、「5%だった金利を半分の2.5%にする」とほとんど約束したわけです。
「小幅な利下げでは米大統領選挙の結果に影響を与えることは困難であったため、大幅かつ急速な利下げを示したのだろう。そうすれば辻褄が合う」と考える人もいるかもしれません注2)。
当然、現政権を担う、ジョー・バイデン氏やカマラ・ハリス氏のいずれもが声明を出し、今回の大幅利下げを「歓迎」しています。「彼らは今後、『FRBの利下げをインフレ撲滅の証』として政治の道具にできる」と考える人もいるかもしれません注3)。
たしかに、パウエル議長は、トランプ前大統領に指名されていますが、バイデン大統領に再任されています。
「共和党の連邦議会議員の一部や過去の共和党政権幹部の一部などのエスタブリッシュメントがハリス候補を支持しているところをみれば、エスタブリッシュメントの『ど真ん中』であるパウエル議長やFOMCメンバーたちも、トランプ氏やロバート・ケネディ・ジュニア氏、イーロン・マスク氏などによる既得権益の打破や、過去の政権やそれらをサポートした官僚、大企業による不正の暴露や追及といったことを回避し、すなわちエスタブリッシュメント側を支援すべく行動を取ったとしてもまったく不思議ではない」と考える人もいるかもしれません注4)。
もちろん、パウエル氏自身の雇用がかかっているという面もあるかもしれません。
「世界の一般庶民から購買力を奪ったうえで、さらにいま、(景気堅調下の大幅利下げという)インフレの新たなリスクを冒してまで自分の職にしがみつこうとしているとすれば、それは大変残念なことである」と考える人もいるかもしれません注5)。
(→注2,注3,注4,注5:これらは、筆者の意見ではありません。そう考える人もいるかもしれないという筆者の想像です)。