「来てくれるのは嬉しいの。でも…」
「おばあちゃん、遊びに来たよ!」
玄関のチャイムが鳴ると同時に、元気な声が響きます。東京都近郊の団地で一人暮らしをする和子さん(仮名・74歳)は、笑顔でドアを開けました。
小学校2年生の孫・陽菜ちゃん(仮名)が、ランドセル姿のまま駆け寄ってきます。
「いらっしゃい。学校帰り?」
「うん!ママがお仕事だから、ちょっとだけね」
娘夫婦は共働きで、学童のあと週に数回、陽菜ちゃんは祖母宅に立ち寄ります。和子さんにとって、孫は何よりの楽しみでした。
「小さい頃から面倒を見てきましたし、本当にかわいいんです」
そう語りながらも、表情はどこか複雑です。
和子さんは2年前に夫を亡くしました。現在の収入は遺族厚生年金を含め月約18万円。持ち家はなく、団地の家賃は月3万8,000円です。
貯蓄は約900万円。「使い切らないように」と、基本的には年金内で暮らすよう心がけています。
「光熱費も食費も上がりましたし、医療費も年々増えています。贅沢はしていません」
総務省『家計調査(2024年)』によると、65歳以上単身無職世帯の平均支出は月約14.9万円。一見、年金18万円なら黒字に見えますが、これは平均値であり、医療費・交際費・住宅条件などで大きく変動します。
「自分ではギリギリだと思っています」
陽菜ちゃんが来る日は、和子さんは必ずおやつを用意します。
「学校のあとだからお腹すくでしょう」
冷蔵庫にはプリンやヨーグルト、時にはアイス。帰る前には小さなお菓子袋を持たせます。
「おばあちゃん、これ好き!」
無邪気な笑顔を見るたび、胸が温かくなります。
けれど同時に、心のどこかが締めつけられるのです。
「週に2〜3回でも、積み重なると結構な額になります。月に5,000円〜8,000円くらいは使っていると思います」
さらに、文房具や絵本、洋服を買うこともあります。
「この前は上履き入れを買いました。ちょっとしたものの購入が積み重なっています」
