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「静かな老後」のはずだった73歳男性
鈴木正男さん(仮名/73歳)は、大手メーカーを定年退職し、現在は年金生活を送っています。現役時代は総務部門で長く働き、備品管理や書類整理など、几帳面さを求められる仕事を任されてきました。
私生活では40歳のときに離婚。以来、再婚はせず、子どもとも連絡を取ることもほとんどありません。退職してからは両親が残した実家に戻り、一人で静かに暮らしていました。
若いころから出不精で、旅行や趣味にお金を使うこともなく、楽しみといえば、家でテレビをみながら発泡酒で晩酌することくらい。ダラダラとマイペースの時間を過ごすのが老後の至福の喜びでした。退職時点での資産は、退職金と貯金を合わせて約2,100万円。公的年金は65歳から月14万円を受け取っています。
「独身で家賃もかからず、物欲もなく、これなら一生困らないだろう」そう考えていた鈴木さんの日常は、ある日突然、崩れ去ることになります。
想定外の災害が、老後資金を一気に奪う
転機となったのは、ある年の豪雨でした。鈴木さんの住む地域でこれまで経験したことのない規模の雨が降り、近くの堤防が決壊し住宅地一帯が洪水に見舞われたのです。
水が引き、避難所から自宅に戻った鈴木さんは言葉を失いました。築60年以上の木造住宅は、1階部分が完全に浸水。1階にあった家具や家電はほぼ全滅し、床下には泥や汚水が入り込んでいたのです。
「なにから手をつければ」と、呆然と立ち尽くす鈴木さん、まずは火災保険を契約している保険代理店に電話をしてみました。
「火災保険に入っているから大丈夫だろう」長年、保険料を払い続けてきた安心感がありました。しかし、電話口の担当者から告げられたのは、耳を疑うような事実でした。

