契約書で契約内容を明確にしておく
■契約書に盛り込むべきこと
もう一つの稼げない原因は、契約内容を明確にしておかないことです。税務に関する内容は税理士、労働関係の手続きは社会保険労務士などと各士業における業務の棲み分けは、明確になっています。
依頼する側は、そのような違いが分からないこともあるので、なんでも聞いてくるクライアントもいます。サービスの一環として、調べて回答する先生もいるでしょうが、避けたほうが無難です。誤った回答をしてしまい、後から問題となる恐れがあります。解決策としてよいのは、知り合いの士業を紹介してあげることです。
契約書には、顧問契約に対応するコンサルティング契約と単発案件に対応する業務委託契約があります。それぞれの留意事項を述べます。
・コンサルティング契約書
担当する業務内容を明確にします。例えば、社会保険労務士であれば、給与計算業務を含むのかなどであり、就業規則の作成などを請け負う場合は、別料金となることを明記しておきましょう。悩ましいのは、クライアントが作成した規定などを確認する場合です。
一から作成するのに比べて工数が少なく済むようにも思われますが、現実には同じくらい時間がかかることもあるからです。
また契約期間の途中において契約当事者の一方が解約を申し出る場合の予告期間や、契約期間満了前において、契約当事者双方から解約の申し出がない場合は、契約は自動更新される旨も記載しておきましょう。
・業務委託書
クライアントとの役割分担を明確にすることです。代行業務であれ、ある程度はクライアントに書類や情報を用意して貰わなければ、スムーズに進みません。
例えば、補助金の申請業務に不可欠な事業計画書などは、クライアントに素案を出して貰う必要があります。安易になんでもお任せくださいという丸受けで業務を引き受けてしまうと後悔します。
また請求できるタイミングを明記しておく必要があります。行政が書類を受理してくれたタイミングで請求できるのか、あるいは正式に許可が下りてから請求できるかなどです。行政が書類を受理してくれても、クライアント側が対応すべきことを怠ったため、許可が遅れてしまうようなこともあります。
社会保険労務士が担当する雇用関係の助成金は、支給の連絡がクライアントにしかきません。業務委託書に支給されたらすぐに連絡するという一文を記載しなければ、いつまで経っても請求できないという事態になってしまいます。私自身、助成金の申請代行をした会社の社長さんと連絡がとれなくなった経験がありました。
コンサルティング契約にしても業務委託契約にしても損害賠償の記載は、留意しなければなりません。失敗はあってはならないことですが、多くの仕事を請け負っていれば、依頼主が満足できない結果になってしまうこともありえます。
労働裁判で負けた、許認可が下りないなどいう事態になりますと、膨大な金額になります。個人的に破産する恐れも生じます。補償する金額は、損害賠償保険で賄える範囲といった文言を入れておくとよいでしょう(クライアントはすぐには納得してくれないかもしれませんが)。
・損害賠償保険
損害賠償保険とは、申請した助成金が支給されなかったなど士業が依頼された案件が成功しなかった際の補償を目的とするものです。
それぞれの士業ごとに損害賠償保険は用意されており、独立するのであれば加入は必須です。しかし補償金額の上限が設定されていたり、損害請求額の何割までと決められたりしていることもあり、請求額の全額が補償されるわけではありません。
また契約書が存在し、意図的なミスでないことを証明しないと利用できません。知り合いから仕事を依頼された際、口約束だけで仕事を進めてしまう人もいるかもしれませんが、契約書だけは交しておきましょう。
繰り返しになりますが、独立するにあたって契約書は重要です。書籍やネットなどにある定型的なフォーマットを流用してもよいですが、不安がある人は、費用を払っても専門家のアドバイスを受けるのもよいです。
士業の仕事では、数千万から億の損害賠償が発生することも日常的にありえます。それを防止できるのであれば、数万単位のお金を払っても惜しくないでしょう。契約書の精査に関しては、民法に精通している弁護士に依頼するのが、一番確実です。
佐藤 敦規
社会保険労務士
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