公的年金は、原則として本人が内容を確認し、必要に応じて自ら手続きを行う必要があります。しかし、その仕組みを十分に理解しないまま受給をはじめた結果、“本来受け取れるはずの年金”を見落としているケースも少なくありません。そこで今回、具体的な事例をもとに、見落としがちな「加給年金」の仕組みと年金制度の注意点をみていきましょう。
悔しいです…年金月11万円の65歳男性、生活のため嘱託社員として再雇用。4年後に知った「年金ルールの盲点」に後悔【CFPが「加給年金のポイント」を解説】
加給年金の受給を諦めていた夫婦
セイジさん(仮名・65歳)は、6歳年下の妻との2人暮らしです。
定年を迎えたセイジさんは、勤務先から引き続き働いてほしいと声がかかり、「嘱託社員」として再雇用されることになりました。
年金は65歳から受給がスタートし、その時点での厚生年金の加入期間は19年。これは、長年建築業界に身を置いてきたものの、会社員として勤務していた時期もあれば、個人事業主として生計を立てていた時期もあり、その働き方が一様ではなかったためです。
そのため、年金額は月およそ11万円。年金だけでは生活が厳しいものの、給与収入があることから家計は安定しており、日々の生活に苦労することはありませんでした。
FP相談で判明した「重大な見落とし」
そして69歳になったセイジさんは、リタイア後の暮らしや相続について整理しておきたいと考え、ファイナンシャルプランナー(FP)のもとへ相談に訪れました。
FPがヒアリングのうえ、現在の資産状況や生活費の見通しを確認していると、セイジさんの年金の明細に「気になる点がある」といいます。
「奥さまはセイジさんより年下とのことですが、加給年金は受給されていないんですか?」
これに対し、セイジさんは苦笑いを浮かべながら答えます。
「いやあ、そうなんですよ。私が65歳で年金を受け取りはじめたとき、厚生年金の加入期間が19年しかなくてね。そのせいで妻が加給年金の対象外になってしまって」
しかしFPは、その後の働き方を確認したうえでいいました。
「でも、セイジさんは65歳以降も嘱託社員として働いて、その間も厚生年金に加入していましたよね。もしそうであれば、加入期間は20年を超えているはずです。ほかの条件も満たしていれば、奥さまは加給年金を受け取れる可能性があります」
配偶者が対象になる場合、加給年金と特別加算をあわせ、受け取れる金額は1年あたり40万円近くになります。
FPが改めて確認したところ、セイジさんは66歳時点で厚生年金の加入期間が20年に達しており、配偶者の年齢などの要件も満たしていることがわかりました。
「65歳過ぎてからでも、加給年金の対象になるなんて……無知なせいで本来もらえるはずの年金がもらえないのは悔しいです」
「大丈夫ですよ。加給年金は最大5年分までさかのぼって請求できます。いまから手続きをすれば、これまでの分も受け取れる可能性があるんです」