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15年の別居と10年の同居…生計維持関係を巡る対立の経過
肺疾患で亡くなった田中和夫さん(享年68・仮名)。 元々都内で建設会社を経営しており、その身の回りの世話や会社の事務を10年前から支えていたのが、内縁の妻である佐藤直美さん(58歳・仮名)です。二人は和夫さんの自宅で同居し、実態としては夫婦同然の生活を送っていました。 和夫さんの部下だった伊藤正雄さん(55歳・仮名)は、当時の状況を次のように語ります。
「和夫さんは持病もあり、直美さんが食事の管理から通院の付き添いまで、すべてを担っていました。 和夫さんも周囲に『彼女がいないと生活が成り立たない』と話しており、社員も皆、彼女を奥さんとして扱っていました」
しかし、和夫さんには戸籍上の妻である幸子さん(66歳・仮名)がいました。 和夫さんと幸子さんは15年前に別居し、以来一度も会っていなかったといいます。 幸子さんは地方の実家に戻り、和夫さんが求めた離婚届への署名を拒否し続けてきました。
和夫さんの死後、直美さんは遺族年金の受給を希望し、年金事務所に相談しました。 直美さんは和夫さんの通帳や家計簿、住民票を提出し、自分が生計を共にしていた事実を主張しました。 これに対し、幸子さんも「自分こそが受給権者である」として、遺族年金の裁定請求を行ったそうです。
「幸子さんは、別居後も和夫さんの口座から毎月5万円の送金が続いていた通帳を証拠として提出しました。 和夫さんは、離婚に応じない彼女への生活費として、あるいは一種の解決料として送金を止めていなかったのです。 直美さんは『生活の実態はこちらにある』と訴えましたが、年金事務所からは『幸子さんとの関係が完全に切れているとは言い難い』という趣旨の説明を受けたようです」
結果として、この事案では直美さんの請求は認められず、戸籍上の妻である幸子さんに遺族年金が支給されることになりました。 10年間生活を共にした内縁の妻ではなく、15年別居していた法律上の妻が選ばれたのです。