薄利多売の労働集約のビジネスモデル
■独立して稼げない人にありがちなのは
独立して数年経ち仕事をそれなりに貰えていても独立前の年収を上回ることができないという人もいるようです。
土日しっかり休めることもなく、長期の休みも取りにくい、労働時間は独立する前よりも増えがちです。つまり時給換算すると独立前よりは悪くなってしまっています。
Twitterなどで「週末は仕事にまい進していました」と呟いていても、生活満足度はあまり向上しないのではないでしょうか。自分の裁量で進められるといっても、ミスが許されないため、神経をすり減らしがちです。収入アップというリターンがあって、初めて成功したといえるのではないかと考えています。
思うように稼げていないのは、安価で仕事を受けてしまっている、契約内容を明確にしていないということが多いと推測します。価格を重視する顧客層は一定数いますので、低料金を前面に打ち出せば、比較的短期間で顧客を増やすことができます。紹介もでやすいからです。
たとえば士業の仕事は、ライターやデザイナーなどのクリエイティブ系の仕事と比較すると、サービスの違いが分かりづらいものがあります。正確さや早さというのは当たり前なので付加価値を打ち出しにくいのです。安いというのが、一番、簡単に差異を出せる手段となります。
とはいえ、薄利多売の労働集約のビジネスモデルなので、遅かれ早かれ限界がきます。
また通常ですと、仕事をこなしていけば、1案件あたりにかける時間は短くなって、時間単価が高くなっていくのですが、安さに飛びつく依頼者は、法令を遵守していない、依頼した書類をなかなか揃えてくれないなど手間がかかる傾向があります。
つまり数をこなしても時間単価は上がっていかないのです。
■料金表を出さない士業が多い背景
士業事務所のホームページを見ると意外と料金を明記していないことがあります。料金を出していても割とざっくりとした感じで、詳細は打ち合わせでなどとしている事務所も多くあります。
もちろん、申請代行の業務を引き受ける際には、依頼主がある程度、用意してくれるのか、一から十まで丸投げするのかによっても負荷が変わってきますので、そう記載するのには理由があります。しかしそれ以上に貰える顧客からはお金を貰い、渋る客には安くするという思惑も透けて見えます。
また、顧客の大半は、自分が加入している団体の知り合いや紹介がきっかけとなるので関係性の深さの度合いによって料金が変わることもあるのです。A社はJC加入時からお世話になっている社長なので3万円、B社は同窓生のつながりなので3万5千円、C社は紹介なので4万円といった具合です。
この考えにも一理ありますが、やはり料金は明示しておいたほうがよいでしょう。特に社会保険労務士などは、今一つ仕事の内容が知られておりません。何を出されるのか不明で値段も分からない飲食店に入るでしょうか。超有名なお寿司屋さんは別としても、入る人はいないでしょう。
仕事を依頼する側からすれば料金が明確になっているほうが頼みやすいです。また仕事を受ける側も案件ごとの料金を明確にしておいたほうが、かける時間とお金の料金との関係が分かります。
自分一人で士業の仕事をする場合、次の式で割り出せる時間単位の単価を上げていくしかないのです。
▶案件の金額÷かけた時間