(※写真はイメージです/PIXTA)

老後に向けた備えとして「年金額」「貯蓄額」に注目が集まりがちですが、実際の生活満足度は、お金の多寡だけでは語れないものです。金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(2023年)』によると、70代の単身世帯の金融資産保有額(平均値)は1,529万円。この水準を大きく上回る資産を持ちながら、生活に孤独を感じる高齢者も少なくありません。「備えは十分だったはず」――そんな人が、老後に直面する“静かな壁”とは何なのでしょうか。

若い頃から贅沢はせず、貯金に努めてきたが…

「老後はお金がすべて。そう思って、ずっと働いてきたんです」

 

そう話すのは、東京都内で暮らす西岡由紀子さん(仮名・72歳)。企業に勤め、定年まで勤続。退職時点で貯金は約5,000万円、年金は企業年金を含めて月20万円強。単身で生活するには、一般的には“老後不安のない水準”といえます。

 

「若い頃から“贅沢はしない、旅行も趣味も控える”って決めていました」

 

結婚は一度もせず、両親を看取ったあとも実家で一人暮らし。近所付き合いはあいさつ程度で、頼る親族もいません。

 

「朝起きて、テレビの電源を入れて、それからはラジオの声に耳を傾けるだけ」

 

退職後は習いごとやボランティアへの参加も検討したものの、いざ自由な時間ができてみると、外に出るきっかけをつかめずにいたといいます。

 

「昼食も、出来合いのものを買ってサッと済ませます。食べるのに10分もかからないし、“いただきます”も“ごちそうさま”も、声に出す相手がいないんですよね」

 

西岡さんは、5,000万円の貯蓄を切り崩すことに強い抵抗を感じており、年金収入の範囲内で暮らすことを徹底しています。週末には都内の美術館などに足を運ぶこともありますが、誰とも話さずに帰宅することが大半だといいます。

 

内閣府『高齢社会白書(令和7年版)』によれば、65歳以上の単身世帯は2025年時点で65歳以上の一人暮らしは男性18.3%、女性25.4%と推計されます。今後さらに増加する見込みであり、「経済的な不安はないが、話し相手がいない」「日常的な会話がない」といった“社会的孤立”の問題が浮き彫りになっています。

 

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