(※写真はイメージです/PIXTA)

「ありたい自分」はただ漫然と生きているだけでは実現しません。そのために当然のことながら努力と準備が必要です。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『70歳からの老けない生き方』(リベラル社)で解説します。

人生のピークは時間とともに変わる

■生きている限り「こうありたい自分」を求め続けよう

 

東京の湯島天満宮の近くをはじめ、全国各所の高台に立つ神社、寺院、あるいは急勾配のエリアでは、しばしば一対の「男坂」と「女坂」に出会います。そのほとんどは階段になっていますが、「男坂」で一直線。もう一つの階段は「女坂」。こちらは階段の途中に踊り場があります。

 

唐突ですが、超長寿社会を生きる人間の道のりは、私にはこの「女坂」に似ているように思えてなりません。もし、女坂の踊り場を「頂=ピーク」と勘違いしてしまったら、本当のピークにはたどりつけない。

 

登り切るには、あらかじめ坂の形態、ピークの位置を先に設定して、登り方、体力の配分を考えなくてはなりません。踊り場をピークと勘違いした人間がそのとき、体力、知力を使い果たしていたら、もはやそこに留まるか下ることしかできなくなってしまいます。

 

「人生100年時代」

 

実現できるかできないかはさておき、自分の人生のピークをできるだけ先のほう、つまり70代ではなく、80代、90代に設定してみることが、この時代に豊かな人生を生き切るために必要なのではないか?

 

私はそんな風に考えています。

 

「何がピークなのか」

 

それは人それぞれでしょう。ただ言えることは、仕事であれ、プライベートであれ、「こうありたい」と願う自分をきちんと設定し、それを実現することであることは間違いありません。

 

「こうありたい自分」の要素は一つだけではないでしょう。私なら、「精神科医としてありたい自分」「映画監督としてありたい自分」「物書きとしてありたい自分」「ひとりの社会人としてありたい自分」など、そのピークの形は多種多様です。

 

また階段のピークと違うのは、人生のピークは時間の経過とともに死ぬまで姿を変え続けるということです。

 

「いやあ、俺なんかもう終わっているよ」

 

そんな諦めの言葉を口にする人がいるかもしれません。否定する前に試してみて、だめならやめればいいのです。

 

「ありたい自分」とは、なにも壮大なスケールの夢のようなものである必要はないはずです。どんなに些細なことであっても、「願っているが、いまの自分にないもの」「願っているが、いまの自分が成し遂げていないもの」をいまの自分に加えることで「ありたい自分」は実現します。

 

生きているかぎり「ありたい自分」は一つ実現することで、さらに上書きされていくものといっていいでしょう。

 

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※本連載は和田秀樹氏の著書『「65歳の壁」を乗り越える最高の時間の使い方』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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