65歳の次男・和志さんの入院中に兄が父に遺言書を作らせたことで、父の相続問題に直面した和志さん。一度作られた遺言書を変更することはできないのでしょうか?相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。
入院していた間に、長男が父に遺言書を作らせて…
65歳の和志さんが、95歳の父親の相続のことで相談に来られました。
和志さんは次男ですが、ずっと実家で両親と同居してきました。60代の兄と50代の妹は、それぞれ結婚を機に実家を離れて生活をしています。母親は10年前に亡くなりましたが、父親は95歳になった現在も自宅で生活をしています。
和志さんは独身ということもあり、実家に住みながら、父親の面倒を看てきました。
現在では通常の生活ができていますが、母親が亡くなった当初は仕事をしながら、増えていく家事に和志さんは体調を崩してしまい、入院を余儀なくされたことがありました。手術を終え退院するまでに1年ほどかかりましたので、その間、和志さんの父親は一人暮らしをしていました。
退院後に驚いたのは、和志さんが入院している間に長男が段取りをして、父親に公正証書遺言を作らせたということでした。和志さんに万一のことがあるかもしれないということだったのかもしれませんが、和志さんが同居する父親名義の自宅は、「長男に相続させる」という内容の遺言書になっていたのです。
長男は、和志さんや妹に内緒で動いていた
和志さんが入院中ということもあったのかもしれませんが、兄は、和志さんや妹には知らせずに、内緒で父に遺言書を作らせています。そのまま隠したかったのかもしれませんが、和志さんが退院し、家の整理をしていた際に発見したのでした。
父親に問い詰めると、すべて兄が段取をして、断れる雰囲気もなく、任せてしまったと言います。
あらためて遺言書を作り直すことに
父親の財産は、自宅と妹家族が住む家と金融資産で約8,000万円。自宅に同居する和志さんが相続すれば特例が活かせるので、納税は不要となります。
しかし、すでに自分の家を所有する長男が相続すれば、小規模宅地等の特例が使えませんので、300万円程の納税は必要になります。こうしたことからも、自宅は父親と同居して、介護している和志さんが相続することが自然の流れだと考えられます。
父親にあらためて真意を確認すると、「自宅は同居する次男に相続させる」ということで、遺言書は作り直すこととなりました。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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