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「故意の無申告」を意味するひっかけワード「除外」
例えば、税務調査官が好んで使うものに「除外」という言葉があります。調査官からすると、家族名義の名義預金が一番見つけやすい申告漏れなのですが、それに結び付けることを意図して「この預金が申告漏れになっています。申告の際に除外したんですか?」などと聞いてくるのです。ここで「はい」と答えてしまうと、後からつつかれる羽目になります。
というのも「除外」とは、「相続税を軽減するために故意に申告しなかった」ことを意味しているからです。事実は単なるうっかりミスだとしても、「除外」を認めてしまったことになるのです。
こんなとき、筆者は「『除外』したわけではなくて、ついうっかり漏れてしまっただけですよね」とブレーキをかけるようにしています。そうでもしないと、税務調査に慣れていないお客さまが誘導的な質問に乗せられ、不用意な発言をしてしまうことがあるからです。
また、調査官は質問に答えるときの表情もよく観察しています。ですから、きちんと目を合わせて、しっかりと確信を持って答えることが大切です。
視線をそらしたりオドオドした態度を取ったりすると「ウソをついているな」と思われて、よりいっそう突っ込んだ質問をたたみかけてきます。気迫負けしない、気持ちの強さが必要です。
筆者は常に、税務調査の1週間くらい前までにお客さまとの打ち合わせの席で、リハーサルをするようにしています。実際のお客さまの答えを基に「それだと申告の内容と合致しないので、ここを突っ込まれますよ」などとアドバイスさせてもらいます。
これを行うことで事実と申告内容が一致しますし、「こんな質問にはこんな答えを」というのが分かって、お客さまも安心できるようです。
「どんなことを聞かれるのか分からない」「どう答えればいいのか分からない」ということが、初めて税務調査を経験する人にとっては、一番不安なことなのではないでしょうか。その不安を拭い去るのが、事前の打ち合わせとリハーサルなのです。
「贈与や相続財産はない」等の発言は調査官の思うツボ
ではここで、申告漏れの指摘の多い名義預金につながる質問について、補足しておきましょう。例えば税務調査の質問項目のなかに、相続人である妻に、自分の親の財産相続の有無、亡き夫からの贈与の有無、妻自身の収入の有無の確認があります。
調査官はこれらに対して「そういうものは私にはなかったです」という言葉を引き出したいと思って質問してきます。
もしこの言葉を引き出すことができれば、通帳などの現物を見ながらの調査のとき、「この預金は奥さん名義になっていますが、奥さん自身の財産ではありませんよね」という方向にもっていけるからです。
「ご両親の財産を相続しておらず、亡きご主人から贈与も受けていない。専業主婦でご自分の収入もなかったということは、これはご主人の財産ですよね。だからあなた名義の口座であっても、相続財産であり相続税の対象になります」ということにしたいのです。