故郷で一人暮らしをする母
伊藤隆さん(仮名)は、現在53歳。実家から離れた地域で妻の洋子さん(仮名)と大学生になる子ども2人の4人で暮らしていました。
8年前に父親が他界したことで、母親は故郷で一人暮らしとなりました。両親はもともと小さな商店を営んでいましたが、それまで貯めた貯蓄もあったことで、父親が年金を受け取れるようになったタイミングで店を閉めたそうです。
父親は商店を始める前に、少しのあいだ会社員として働いていたこともあり、母親が受け取っている年金は、月に基礎年金が6万円、遺族厚生年金が3万円。母親は以前から質素な生活を送っていたため、隆さんには「9万円も年金がもらえれば生活できる」といっていたそうです。隆さんは母親の言葉を信じ、「母親には父親の遺産も相続されている分があるから、不足分は取り崩しながら生活をしているのだろう」と思っていました。
母親も他界、実家の遺品整理を行っていると…
しかし今回、母親が80歳にして他界し、葬儀や49日の法要も終わり、遺品整理をしていたところ、防災リュックを見つけました。非常食の賞味期限を確認しようとファスナーを開けたところ、中身がパンパンに詰まった色付きの防水パックが出てきました。中身を確認すると大量の現金が入っていたため、隆さんは仰天しました。一緒に来た妻とともに手分けして数えてみると、なんと2,000万円以上ありました。
今度は残された通帳を確認してみると、年金が振り込まれるとすぐに引き出していたようです。長い時間をかけてコツコツと蓄えていたのでしょう。
隆さんが帰省したときのことを振り返ってみると、母親は過度な節約をしている節を感じることも多々ありました。「そんなに切り詰めて生活しなくてもいいじゃないか」とアドバイスをしたことも。しかし母親は「これくらいがちょうどいいのよ」と頑なな様子だったのです。「母親が必要以上に生活を切り詰めていたのはこのためだったのか」と隆さんは納得しました。災害のときにも忘れず持ち出せて、耐火性のリュックに防水パックとは、母親らしい用心深さだなと感心するとともに、母親の胸中を察します。
思い起こせば、母親は商店を営んでいるときから銀行に対して、あまりいい思いをしていなかったようで、貯金をするよりも現金を持っているほうが安心に感じていたのかもしれません。
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