(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者のうつ病が見逃されると、心の元気を奪う、認知症を誘発させやすくなります。そばにいる家族でも気づかないことがあるといいます。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『老人入門 いまさら聞けない必須知識20講』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

日の光をたっぷり浴びると元気になる

■日の光はいくつになっても気持ちを明るくしてくれます

 

抑うつ気分は脳内のセロトニンが減少していることで生まれます。セロトニンは前の講でも学んだようにタンパク質から作られますが、40歳を過ぎたころから減少してきます。高齢になってセロトニンが減ってくるということは、うつになりやすい状態になるということです。

 

したがって、高齢者のうつはセロトニンが含まれている抗うつ剤を服用することでわりと簡単に改善することがあります。

 

ある高齢者施設でこんな話を聞いたことがあります。

 

そこは広い食事室があって利用者さんは大きな壁掛け型のテレビを観て食事をしていました。2階の窓の広い食事室でしたが、とくに朝は日の光が差し込んで眩しいのでテレビが見えにくいだろうと配慮してカーテンを閉めていたいたそうです。

 

ところが一人の利用者さんが、「眩しくてもいいから日の光が見たい」と言い出したそうです。

 

そこで管理者が試しにすべてのカーテンを開け放ってさんさんと朝の日光が差し込むようにしたそうです。「テレビが見にくい」と苦情が出るかなと思ったらそうではありませんでした。

 

「やっぱり気持ちいいね」
「お日さまと青空が見えると嬉しいね」
「何だか元気になるね」

 

とみんなが喜んだそうです。隣同士でおしゃべりも始まって、それまでの黙りこくってテレビを観ながら食事していたころよりはるかに賑やかで、笑い声の飛び交う食事室になったそうです。

 

どんなに老いても日光と青空の気持ちよさは変わりません。

 

身体が動く間、歩ける間は外出する時間を持つこと、日の光をたっぷりと浴びること、たったそれだけでも気持ちが弾んできます。日光にはセロトニンを増やす働きがあることも覚えておいてください。
 

和田 秀樹
和田秀樹こころと体のクリニック 院長

 

 

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本連載は和田秀樹氏の著書『老人入門 いまさら聞けない必須知識20講』(ワニブックスPLUS新書)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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