(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢の親の資産状況は、子どもが把握していないまま年月が過ぎることも少なくありません。とくに一人暮らしの親の場合、生活費や医療費、将来の住まいに備えた資金移動が、家族に共有されないまま進むケースもあります。金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(2023年)』によれば、70歳代・単身世帯の平均資産保有額は1,529万円。親の通帳を初めて見たとき、子どもが想定していた「老後像」と現実がずれることは珍しくありません。

「母さん、これ何?」通帳にあった大きな資金移動

都内在住の会社員・A平さん(52歳)は、地方で一人暮らしをする母・B子さん(83歳)のもとへ帰省しました。父はすでに他界し、母は年金月約13万円で暮らしています。

 

帰省のきっかけは、母の軽い転倒でした。

 

「大丈夫よ。ちょっと尻もちついただけ」

 

そう笑う母を見て、A平さんは胸騒ぎを覚えます。家の中はきれいに片付いていましたが、階段や浴室には年齢相応の危うさが見えました。

 

「そろそろ、これからのことも考えないと」

 

そう思い、母の了解を得て生活費の管理状況を確認することにしました。

 

そのときでした。通帳の記帳欄に、目を疑う数字が並んでいたのです。

 

【1,200万円 振替】

 

思わず声が出ました。

 

「母さん、これ何?」

 

母は少し黙ったあと、静かに言いました。

 

「施設に入るときのお金よ」

 

A平さんは驚きます。

 

「施設って…そんな話、聞いてないよ」

 

母は言いました。

 

「迷惑かけたくないの。自分のことは自分で用意しておきたい」

 

資金は、長年の定期預金を解約して普通預金に移したものでした。さらに一部は、介護付き有料老人ホームの入居一時金の準備として別口座に移されていました。

 

実は母は、転倒をきっかけに将来の住まいを調べ始めていたのです。

 

「見学も行ったの。元気なうちに入れるところ」

 

民間の介護付き有料老人ホームでは、入居時に数百万円〜数千万円の前払金が必要なケースもあります。厚生労働省の資料でも、施設種別によって費用構造が大きく異なることが示されています。

 

母が検討していた施設は、入居一時金1,000万円台・月額費用約20万円程度の中価格帯施設でした。

 

年金13万円では不足します。そのため母は、自身の預貯金から月額不足分を補填できるよう資金移動をしていたのです。

 

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