(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢期の暮らしは、年金や貯蓄が一定程度あれば安定すると考えられがちです。しかし実際には、家族との同居や扶養関係が家計や生活環境を大きく左右するケースも少なくありません。内閣府『令和7年版 高齢社会白書』によれば、65歳以上のいる世帯のうち20.2%が「親と未婚の子のみの世帯」です。成人した子どもが経済的に自立できず親に依存する「8050問題」も社会課題として指摘されています。老後の安心は、必ずしも資産額だけでは測れない現実があるのです。

「少しの間だけ」のはずだった

「こんなはずじゃなかったんです」

 

そう語るのは、関東近郊の戸建て住宅で暮らすA夫さん(70歳)と妻のB子さんです。

 

夫婦ともに会社員として働き、65歳で退職。現在は年金収入が夫婦合計で月約24万円、金融資産は退職金を含め約2,500万円。住宅ローンは完済しており、生活費も月20万円前後に収まるため、「贅沢はしないが不安のない老後」と考えていました。

 

「旅行にも少しずつ行こうねって話していたんです。やっと夫婦の時間が持てるねって」

 

転機は3年前、長男(40歳)が実家に戻ってきたことでした。

 

長男は地方大学卒業後、都内の企業で働いていましたが、コロナ禍で勤務先が業績悪化。配置転換や給与減少が続いた末、退職したといいます。

 

「少し休みたい」「転職活動する間だけ実家に置いてほしい」

 

そう頼まれ、夫婦は同居を受け入れました。

 

「親として当然だと思ったんです。困っているときは支えないとって」

 

しかし「数ヵ月」のはずの同居は、1年、2年と続いていきました。長男は当初こそ転職活動をしていた様子でしたが、次第に外出が減り、昼夜逆転の生活になりました。

 

「今日はどこも応募しなかった」「もう少し考えたい」

 

そんな言葉が続き、やがて就職活動自体をしなくなったといいます。食費や光熱費はすべて親負担。電気代や水道代も増加しました。

 

「大人3人分になると、食費も月6万円くらい増えました」

 

長男は家事をほとんどせず、部屋にこもる生活が続きました。注意すると口論になり、家庭内の空気は悪化していきます。

 

「親として助けたかった。でも、ずっと養うつもりではなかったので…」

 

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