「少しの間だけ」のはずだった
「こんなはずじゃなかったんです」
そう語るのは、関東近郊の戸建て住宅で暮らすA夫さん(70歳)と妻のB子さんです。
夫婦ともに会社員として働き、65歳で退職。現在は年金収入が夫婦合計で月約24万円、金融資産は退職金を含め約2,500万円。住宅ローンは完済しており、生活費も月20万円前後に収まるため、「贅沢はしないが不安のない老後」と考えていました。
「旅行にも少しずつ行こうねって話していたんです。やっと夫婦の時間が持てるねって」
転機は3年前、長男(40歳)が実家に戻ってきたことでした。
長男は地方大学卒業後、都内の企業で働いていましたが、コロナ禍で勤務先が業績悪化。配置転換や給与減少が続いた末、退職したといいます。
「少し休みたい」「転職活動する間だけ実家に置いてほしい」
そう頼まれ、夫婦は同居を受け入れました。
「親として当然だと思ったんです。困っているときは支えないとって」
しかし「数ヵ月」のはずの同居は、1年、2年と続いていきました。長男は当初こそ転職活動をしていた様子でしたが、次第に外出が減り、昼夜逆転の生活になりました。
「今日はどこも応募しなかった」「もう少し考えたい」
そんな言葉が続き、やがて就職活動自体をしなくなったといいます。食費や光熱費はすべて親負担。電気代や水道代も増加しました。
「大人3人分になると、食費も月6万円くらい増えました」
長男は家事をほとんどせず、部屋にこもる生活が続きました。注意すると口論になり、家庭内の空気は悪化していきます。
「親として助けたかった。でも、ずっと養うつもりではなかったので…」
