若者が自ら命を絶つ社会の歪み
■10代の自殺率は上昇 20代の死因トップは自殺
「コロナウイルスのことで日本中がパニック状態みたいになっているけど、死者とか社会的な影響もすごいんだろうけども。自殺者が多い時代に、そっちはあまりみんな気にしていないのに……。コロナウイルスでこれだけ騒ぐのに、せめて同じ程度に社会的なちょっと歪みとかいうのをね、厚労省でも考えてほしいっていう感じはしますけどね」
新型コロナウイルスの感染が世界中に広がり、死者が増え続け、世界経済が混乱に陥り始めていた2020年2月下旬。タレントのビートたけしさんが、新型コロナウイルスをテーマにしたテレビ朝日の番組で、唐突にこう言いました。新型コロナウイルスによって多くの日本人が不安に駆られているさなかに、あえて、深刻な自殺の問題を日本社会が置き去りにしていると警鐘を鳴らしました。
日本は自殺率が極めて高い国だと世界に知られています。特に若い人の自殺が多い、奇異な国だと見られています。「日本社会が息苦しい」ことは、データに裏付けられているのではないでしょうか。かねてから、日本の自殺に問題意識を抱いていたビートたけしさん。新型コロナウイルスで頭がいっぱいの日本人にあえて問いかけたのです。
日本の2019年の自殺者は、前年より671人(3.2%)減って、2万169人(確定値)になりました。10年連続で減り続け、1978年に統計を取り始めてから、最も少なくなりました。しかし、依然、1日に約55人が自殺している計算です。日本は人口に対する自殺率がG7(先進7カ国)の中で最悪です。しかも、10代の自殺者が増えている深刻な状況です。
これは日本社会が本気で取り組まなければならない最重要テーマです。夢を抱いて未来を切り拓いていくはずの若者が、自ら命を絶っていく社会とは、明らかに歪んでいます。
年齢別にみると、人口10万人当たりの自殺者は、50代が一番多く21.1人。次いで80 代以上が19人。40代が18.5人。10代に至っては前年の5.3人から5.9人に増え、過去最悪となりました。いじめや学業不振などが原因になったケースが多いということです。19歳以下の自殺の原因・動機は「学校問題」が最も多い傾向にあるのです。