「いつかCEOになりたい」重い罪を償い大きな夢に挑む…やり直しができる米国社会の凄み (※写真はイメージです/PIXTA)

受講生の白人受刑者は殺人罪で服役中でも、アプリ開発の会社を創る夢を抱いていました。やり直しができるアメリカという国のたくましさを象徴しています。ジャーナリストの岡田豊氏が著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社、2022年2月刊)で解説します。

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成功体験が邪魔をして考えなくなった日本人

■ひとつの船に押し込められた日本人、アメリカ人は各人の船をこぐ

 

「アメリカ人はみんな自分の小さな船に乗り、ひとりで必死にこいでいます。沈むリスクはありますが、個々の船の存在は尊重されています。厳しいが、楽しくもある」

 

生活の拠点を日本からニューヨークに移して10年以上たつ知人の翻訳家は、こう語ります。

 

「日本人はひとつの大きな船に押し込められています。その大きな船に乗ってさえいれば目的地に連れていってくれますが、突出した個性は許されません」

 

この指摘はアメリカと日本の違いの本質を突いているかもしれません。アメリカ社会は個人を尊重するから、自分の居場所を見いだせるチャンスは多い。しかし、「競争が激しい社会なので、自分のアイデンティティーをしっかり見いだして、個を確立しないと、うまく生きていけないのではないか」と知人は言います。アメリカでは、個性や存在が認められても、それだけでは決して幸せなわけではなく、懸命に自分の頭で考え、行動して成果を出さないと埋没してしまうという指摘です。

 

「日本人は、自分で考えなくても何とかなるようにできている」

 

知人はこう言います。代わりに、尺度や価値観の数は少ない。そうしないと、ひとつしかない船は収拾がつかなくなるのではないかと。一人ひとりが自分で考え、価値観や尺度が増えたりすると、都合が悪くなるのではないかと指摘します。

 

「忖度」を直訳できる英語はなかなかありません。「日本は暗黙のルールが多いから息苦しい」と知人の中国人は言います。暗黙のルールの典型は「空気を読まないといけないこと」だそうです。そう言えば、空気を読まない人を「KY(ケーワイ)」と呼んで揶揄することがあります。「空気を読む」を直訳できる中国語はないそうです。日本では「横並び意識」が重視されがちです。同質性が高い社会と言われます。

 

個性を奪われてもリスクが小さい大きな船に乗るのか。リスクは大きくても自分の頭で考えられる自分の船をこぐのか。私たちは、どちらを選べばいいのでしょうか。

 

いつから日本人は自分で考えなくなったのか。

 

「戦争に負けた後、多少裕福になったころではないでしょうか」

 

翻訳家の知人はこう指摘します。敗戦後、日本人は、がむしゃらに働いて、高度経済成長を成し遂げ、「奇跡」ともてはやされました。その成功体験が邪魔をして、日本人は自分の頭で考えなくなったのかもしれません。

 

また、日米安全保障条約などによって、アメリカに国防を依存するという構造を受け入れた結果、平和がいかに尊いことか、平和を維持することがいかに困難を伴うことか、考える感度が鈍ってしまったのかもしれません。

 

■「五十肩」「老眼鏡」と言わない価値観

 

ニューヨークで診療所に行った時のことです。肩がバリバリに張って腕が上がらなくなりました。

 

「五十肩かもしれません。診てください」

 

すると医師は「あー、フローズン・ショルダー(Frozen shoulder)ですね」と。

 

「フローズン・ショルダーって何ですか」と聞く私に、「四十肩、五十肩のことですよ。アメリカでは、forty shoulder とか、fifty shoulder とは言いません。年齢差別につながるからですかね」と医師。

 

フローズン・ショルダー。肩が凍ってしまったように痛いという、その症状だけを表現した言葉です。日本の四十肩、五十肩は、その年齢で症状が出るという、年齢に重点を置いた言葉です。フローズン・ショルダー。何となく、センスが良いなと思いました。似たような言葉が他にもあります。

 

ニューヨークで英会話のレッスンを受けていた時でした。「老眼鏡が必要になってきた」と英語で言いたかったのですが、老眼鏡の単語が出てきませんでした。すかさず講師が「Readingglasses」と教えてくれました。リーディング・グラスィズ。「読むための眼鏡」。

 

日本語の「老眼鏡」と比べると、やはり、機能を重視した言葉です。「老」という人間の年齢の特徴を表現することを避けた言葉なのでしょうか。

 

日本語で「老いる」という言葉には、素晴らしい意味合いが込められていますが、ネガティブなイメージを感じる人もいます。リーディング・グラスィズという表現は、余計な印象を排除するがごとく、実にシンプルで、オシャレな言い方だなと感じました。

 

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    ジャーナリスト

    1964年、群馬県高崎市生まれ。日本経済新聞記者を経て1991年から共同通信記者。山口支局、大阪支社、経済部。阪神淡路大震災、大蔵省接待汚職事件、不良債権問題、金融危機など取材。2000年からテレビ朝日記者。経済部、外報部、災害放送担当(民放連災害放送専門部会委員)、福島原発事故担当、ANNスーパーJチャンネル・プロデューサー、副編集長、記者コラム「報道ブーメラン」編集長、コメンテーター、ニューヨーク支局長、アメリカ総局長(テレビ朝日アメリカ取締役上級副社長)。トランプ氏が勝利した2016年の米大統領選挙や激変するアメリカを取材。共著『自立のスタイルブック「豊かさ創世記」45人の物語』(共同通信社)など

    著者紹介

    連載自分の頭で考える、自分のやり方を考える

    本連載は、岡田豊氏の著書『自考 あなたの人生を取り戻す/不可能を可能にする/日本人の最後の切り札』(プレジデント社、2022年2月刊)より一部を抜粋し、再編集したものです。

    自考

    自考

    岡田 豊

    プレジデント社

    アメリカでの勤務を終えて帰国した時、著者は日本は実に息苦しい社会だと気付いたという。人をはかるモノサシ、価値観、基準の数があまりにも少ない。自殺する人があまりにも多い。笑っている人が少ない。他人を妬む。他人を排…

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