(※写真はイメージです/PIXTA)

4年間のアメリカ勤務を終えて日本に帰国しました著者は日本社会が歪んで見えたといいます。朝の通勤時に笑わない日本人、譲り合おうとしない日本人…。このままでいいのでしょうか。ジャーナリストの岡田豊氏が著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社)で解説します。

4年ぶりに日本に帰国して感じた違和感

■息苦しい日本社会、なぜ笑わなくなるのか


 
2017年夏。4年間のアメリカ勤務を終えて日本に帰国しました。思えば、アメリカ赴任が決まった時は戸惑いました。慣れ親しんだ日本を離れる不安。言葉も、文化も、仕事の進め方も、すべてが違う環境で、楽しくやっていけるのかどうか。それも杞憂に終わり、4年間を無事に過ごすことができました。

 

そして、慣れ親しんだ日本で、また、平穏な暮らしが始まるんだと胸を弾ませていました。しかし、帰国直後から、言い知れぬ違和感に襲われたのです。この違和感が、本連載を書こうと思ったきっかけです。

 

帰国した翌日、銀行や役所に行って諸手続きをし、その翌日から、東京の本社で仕事がスタートしました。最初の異変に気付いたのは朝。久々の通勤電車でした。満員の車両やホームでは誰も笑っていません。会話もありません。

 

駅で降りたいのに満員の車両の中ほどで身動きが取れず、降りられない人がいます。譲ろうとする人も少ない。降りる人も一言、「降りまーす」と言えばいいのに、無言で無理に人をかき分けて降りようと必死の形相です。

 

滑稽な風景でした。満員電車という空間の中で、なんだか「個人」が埋もれそうになっている。そんな光景に見えました。駅に着くと、我先にと降りる人、人、人。他人を押しのけていく人もいます。私がまだ慣れていないせいもあったのでしょうが、ホームを歩いていると、後ろから来た人に、かかとを踏まれました。後ろから走ってくる別の人には背中を押されました。

 

アメリカ赴任前、この“痛勤”風景には慣れていたはずでしたが、強い違和感を覚えました。他人に譲り合おうとするアメリカ社会になじんでしまった反動だったかもしれません。

 

笑っている人が明らかに少ないと感じました。アメリカ人は本当によく笑っていましたから。

 

銃の所持が認められているアメリカでは、笑うことで敵に警戒心を与えないよう自己防衛している要素があるとも言われます。しかし、それだけではないような気がします。アメリカ人は本当に人々とよく語らい、本当によく笑います。

 

「笑うために生きている」

 

そんな印象でした。アメリカではそんな明るい人たちに囲まれて生活していました。

 

笑いは周囲に伝播し、幸福感が連鎖します。

 

笑いはとても大事です。ストレス解消や免疫力に影響を与えるという人もいます。

 

日本では、なぜ笑いが少ないのでしょうか。ガムや菓子で知られるモンデリーズ・ジャパンが2017年10月、全国の20代から50代の男女600人を対象に調査したデータによれば、1日に笑う回数は全体平均で11.3回でした。

 

20代は15.0回なのに対し、50代になると7.1回に減ります。そして、生活の中で「笑い」が足りないと回答する人は54.4%に上りました。

 

また、化粧品会社のアテニアが2015年、20代から50 代の女性800人を対象に1日の笑う回数を調査しました。その数は1日平均およそ13.3回。赤ちゃんや就学前の子どもは1日400回笑うとも言われているので、それに比べると激減しています。

 

年代別では、20代、30代が1日約15回、40代が12.8回、50代が10.6回と年齢が高くなるにつれて減っていきます。「大人になれば、笑わなくなるのは当たり前だろう」と言われるかもしれません。

 

でも、あえて問いかけます。

 

「大人も、赤ちゃんや子どものように、笑って暮らすことはできないでしょうか」

 

私たちから笑いを奪う原因は何なのでしょうか。

 

しがらみ、ルール、慣習、価値観。個人や個性の軽視……。これらが笑いを奪っているとしたら、自らの笑いを取り戻し、社会に笑いを増やすために、自考で立ち向かわなければなりません。

 

次ページ「忖度」という言葉は英訳できない?

本連載は、岡田豊氏の著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

自考

自考

岡田 豊

プレジデント社

アメリカでの勤務を終えて帰国した時、著者は日本は実に息苦しい社会だと気付いたという。人をはかるモノサシ、価値観、基準の数があまりにも少ない。自殺する人があまりにも多い。笑っている人が少ない。他人を妬む。他人を排…

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