このままでは日本の後進国入りは避けられない…日本人の最後の切り札となる「自考」とは?

このままでは日本の後進国入りは避けられない…日本人の最後の切り札となる「自考」とは?
(※写真はイメージです/PIXTA)

高校に入学したばかりの4月、母親ががんで他界。さらに、唯一の支えだった野球を捨ててしまいます。母を失ったショックで精神のバランスが崩れ、グラウンドに立てなくなりました。ジャーナリストの岡田豊氏が著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社)で解説します。

母親ががんで他界、野球を捨てた

■暗闇の日々から立ち上がる 自考の始まり

 

ところで、本連載の筆者は何者なのか。自己紹介を兼ねて、ちっぽけな昔話をさせていただきます。中学を卒業したばかりの私が、もがく姿です。くだらない、大げさだと感じる方もいるでしょうが、恥ずかしながら、弱い人間だった私にとっては苦しい時間でした。その弱い人間が初めて自考しようとし、初めて自分の足で立とうとしていました。

 

「命を絶てば、この苦しみから解放されるのか」

 

茫然とした頭と心で、自問自答を繰り返していました。目で見る風景から本当に色が消えました。暗闇の中にいました。

 

私は高校1年生。授業が終わると、すぐさま自転車で帰宅。万年床で布団を被り、日常を断ち切る。嗚咽しながら、爪を立て敷布団をかきむしる。真っ暗な下水道をぴちゃぴちゃと這いつくばるような毎日。やっと息をしていました。自分であえて呼吸をしなければ、息が止まってしまいそうでした。

 

人生経験が浅く、小さなコップの世界しか知らなかった高校1年生。自ら招いたショックと挫折で、自分を絶望という言葉の中に追いやっていました。

 

中学を卒業し、高校に入学したばかりの4月、母親が、がんで他界しました。医療施設を退院して、やっと帰宅できた日の翌朝、母は息を引き取りました。たった1日ですが自宅で最期を迎えられました。父から「お母さんは胃潰瘍だ」と言われていたので、母の死は突然で、予想外で、衝撃でした。

 

胃潰瘍ならすぐ回復するだろうと思い込んでいたので、看病もせず、中学野球と高校受験の勉強に明け暮れていました。母親に反抗ばかりし、「いつか親孝行すればいいや」と流してきました。母の死後、胃潰瘍というウソは父の配慮だったとすぐに分かりましたが、母に寄り添わなかった自分を責め、強烈な後悔に襲われました。

 

私を大切に育ててくれた母に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。母親に何も恩返しができなかったことが、こんなに苦しいことだとは思いもよりませんでした。自分の中の何かが壊れてしまいました。

 

さらに、唯一の支えだった野球を捨ててしまいます。中学野球では群馬県高崎市の夏の大会で3年連続の優勝。中学3年最後の大会はキャプテンとしてチームを率い、群馬県大会で3位。群馬県の甲子園常連校2校から入学の誘いを受けましたが、別の高校の野球部に入り、甲子園を目指していました。東京六大学で野球をするのが夢でした。

 

しかし、母を失ったショックで精神のバランスが崩れ、グラウンドに立てなくなりました。自分は弱い人間だと初めて思い知らされました。野球しかなかったのに、自らよりどころを捨て、自信を失い、自分を追い詰めていました。無様でした。

 

「あいつはダメな奴だ」

 

選手として高く評価してくれていた周囲の野球関係者らは、手のひらを返したように退部した私を非難しました。高校野球という“伝統”の世界を裏切った仕打ちなのでしょうか。人を信じられなくなり、疑心暗鬼に陥りました。

 

顔から表情が消えました。生きているのか、死んでいるのか、分からないような朦朧とした状態。精神科医に診てもらえばよかったのでしょうが、そんな知恵も思い浮かびません。

ただ、自ら命を絶つことはできませんでした。他界した母親が、自殺を我慢してがんと闘い抜いたからです。父からそう聞かされました。想像を絶するがんの激痛。闘病中、母はハサミで手首を切ろうとしました。病室を勝手に這い出して近くの踏切に向かい、飛び込もうとしました。私が参加しなかった闘病生活は壮絶でした。

 

「自分が自殺したら、子どもが不幸になる」

 

回復への希望が薄れていく中、母親はその思いだけで激痛に耐えたそうです。自殺しないことが子どもを守ることだったのです。その母親の思いを台無しにするわけにはいきませんでした。

 

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本連載は、岡田豊氏の著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

自考

自考

岡田 豊

プレジデント社

アメリカでの勤務を終えて帰国した時、著者は日本は実に息苦しい社会だと気付いたという。人をはかるモノサシ、価値観、基準の数があまりにも少ない。自殺する人があまりにも多い。笑っている人が少ない。他人を妬む。他人を排…

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