(※写真はイメージです/PIXTA)

東京五輪の競泳女子200mと400m個人メドレーで優勝し、日本女子で初の2冠を達成した大橋悠依選手。彼女は、ぶつかり合いながらも、正面から向き合った平井監督から「考えるきっかけを与えてもらった」と語っています。ジャーナリストの岡田豊氏が著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社)で解説します。

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油絵を「自由に」描くという授業

■生徒の「個」を認めた美術教師「ゴッホ」

 

生き方に影響を与えてくれる教師にめぐり合うことは稀まれなことかもしれません。

 

その風変わりな高校の美術教師は、私の高校で生徒から「ゴッホ」と呼ばれていました。教師というよりも、絵画を愛する芸術家でした。ある日の授業は、高校の敷地内で好きな風景をスケッチし、油絵を「自由に」描くという課題でした。

 

私は、それまで、風景を忠実に書き写す写生風の絵が評価されると思い込んでいました。でも、「写生するなら写真を撮ればいいじゃないか」といつも斜に構え、真剣に絵を描いたことがありませんでした。

 

「自由に」描けというので、感じたままにコンテを描き、現実とはまったく違う色を思うままに塗りたくりました。構図も色もハチャメチャ。ヒマラヤ杉は校舎に比べて格段に大きくアンバランス。空は異様な紫色と赤色。

 

クラスメートから「まじめに描けや」と揶揄されました。でも、そう感じた形と色なのだから、仕方ないと開き直っていました。

 

数回の授業を経て油絵を完成させ、「ゴッホ」に提出しました。怒られるかもしれないと覚悟していましたが、「ゴッホ」は何も言いません。それどころか、その学期の美術の成績は10段階で最高の「10」。数学は最低の「1」とか、出来の悪い生徒でしたから、驚きました。

 

「あの絵、いいね」

 

「ゴッホ」はこう言いました。ありのままの自分を自由にぶつけたのが良かったのだそうです。学校で初めて自分の「個」が認められ、受け入れられたと実感できた瞬間でした。

 

「自分が感じたまま、考えたまま、ありのままでいい」
「人と違っていていい」

 

私はそんなメッセージをもらったと受け止めました。うまく表現できませんが、その時、自分の存在を少し大切に感じました。

 

振り返ってみると、日本は「人と違うことが求められない」社会だと感じます。「個」を認め、受け入れ合うことが、いかに大切なことか。「ゴッホ」は、このことを明確に伝えてくれました。既存のルールにとらわれず、過去の歴史に惑わされず、集団で群れない。私の自考という発想の源流のひとつに、「ゴッホ」の授業がありました。

 

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    本連載は、岡田豊氏の著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

    自考

    自考

    岡田 豊

    プレジデント社

    アメリカでの勤務を終えて帰国した時、著者は日本は実に息苦しい社会だと気付いたという。人をはかるモノサシ、価値観、基準の数があまりにも少ない。自殺する人があまりにも多い。笑っている人が少ない。他人を妬む。他人を排…

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