ワンルームマンションの開発規制が強化
■ワンルーム開発規制条例でさらにプレミアム化?
現在、東京23区すべての自治体で、ワンルームの建設を規制する「ワンルームマンション開発規制条例」が制定されています。代表的な規制が「最低面積の規定」です。「これは、マンションを建設するにあたり、1戸あたりの最低専有面積を定めたものです。
渋谷区では2013年に最低面積を18平方メートルから28平方メートルへと大幅に引き上げました。2011年には、中野区、大田区、練馬区、足立区が最低専有面積を25平方メートルへ引き上げています。
ワンルームの一般的な専有面積は18平方メートルから25平方メートルですから、まさにワンルームをねらい撃ちにしたものです。
規制が強化されているのは、最低面積だけではありません。ファミリータイプ住戸の設置条件も強化されています。
例えば、渋谷区ではファミリータイプの基準が39平方メートル以上から50平方メートル以上へと引き上げられました。総戸数60戸のマンションの場合、ファミリータイプの住戸を商業地域では15戸以上、そのほかの地域では23戸以上設置することが義務づけられています。ディベロッパーにとっては、供給数が多くとれるワンルームに対してファミリータイプの割合が増加すると、収益性が悪化することになります。
また、東京23区のなかで豊島区では、建築されたワンルームに対して課税するという「ワンルームマンション税」を唯一導入しています。専有面積30平方メートル未満の住戸が9戸以上あるマンションを建てる場合、1戸あたり50万円が課税され、着工から2か月以内に支払わなければなりません。
そのほか、ワンルーム規制を「指導要綱」から「条例」に格上げするなど、さまざまな点から規制が強化されています。
新規供給が先細る一方で、新宿、渋谷、品川といったビッグターミナルへの交通が便利な立地の賃貸需要は相変わらず旺盛なので、限られた数の好立地の優良な中古のワンルームに入居希望者が殺到することになります。
規制の強化もさることながら、東京23区内で最寄り駅から近く、ワンルームの建設に適した土地の供給自体が少なくなっています。コロナ禍で減速はしたものの、分譲マンション建設に適した立地はホテル建設需要とも競合するので、土地の仕入れは苛烈を極め、建設原価はますます高騰します。
厳しくなる開発規制、手に入れにくいワンルームマンションに適した土地。2つの理由から好立地での新規供給は減少していますが、23区内の駅から近いワンルームは、入居者からの人気は相変わらず高く、安定した賃貸需要が見込めます。
重吉 勉
株式会社日本財託 代表取締役社長
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