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ひたすら働いてきたサラリーマン人生に幕
Aさんは大手電機メーカーの研究開発部門で、文字どおり身を粉にして働いてきました。大学院で最先端の技術を研究し、入社後もその知識と探求心を活かして新製品開発に貢献。若くしてチームリーダーを任され、常に納期と品質という重圧を背負いながら、昼夜を問わず研究室に籠る生活を送っていました。
彼の日常は、朝早く出社し、実験データと向き合い、会議で議論を重ね、夜遅くまで論文や技術資料を読み込むことの繰り返し。週末も学会発表の準備や、海外の研究機関とのやりとりに時間を費やすことが常でした。社内ではその卓越した能力と真摯な仕事ぶりから厚い信頼を得ていましたが、プライベートな時間はほとんどありませんでした。
交際していた女性も何名かいましたが、研究が佳境に入ると、どうしてもそちらを優先してしまい、気づけばすべて立ち消えに。女性とじっくりと向き合う時間も、将来について語り合う心の余裕も、当時のAさんには皆無だったといえるでしょう。「いまは仕事が一番大事だ」と、目の前の課題に没頭する日々。
彼の周りの同僚たちが家庭を築き、我が子の話をするようになっても、Aさんの生活は変わりませんでした。仕事の面白さ、目標を達成する喜びが、彼にとってなによりも優先されるものだったのです。昇進するにつれて責任は増し、ますます仕事にのめり込む一方。気がつけば、恋愛や結婚といった人生の大きな出来事は、遠い世界の出来事のように感じられるようになっていました。
決して結婚願望がなかったわけではありません。ただ、仕事という猛烈な奔流のなかで、立ち止まって人生の伴侶を探す機会を逸してしまったのです。いまとなっては、静かに、そして少しばかりの寂しさを抱えながら、長年の仕事から解放された日々を送っています。
高い収入があったものの、忙しさにかまけて使う暇もなく、質素な生活を送っていました。それは将来のためにというよりも、ただ単に時間と心の余裕がなかったからです。
いまとなっては一昔前の働き方ともいわれるようになりましたが、新卒で入社した会社で定年退職の日を迎えます。年金は月20万円、退職金は2,000万円と、おひとりさまの老後資金には十分な金額です。さらに、Aさんは若いころから資産形成を行っており、退職金と合わせると貯蓄額は億超え。数字だけみれば老後の心配なんて必要ないでしょう。

