日本でも拡大する「デジタルサイネージ」
「デジタルサイネージ」とは、広告や情報などさまざまなコンテンツを電子化して発信する表示ツールのこと。サイネージとは、看板やポスターのことを指す。
デジタルサイネージという言葉は知らなくても、電車や駅、テナントビル、公共施設、病院、タクシー、エレベーターなど、多くの場所に設置され動画が流れているため、多くの人が目にしているはずだ。最近ではビルの屋上や外壁、店頭など、屋外に設置するケースも増えている。
日本の広告市場は、大きく3つに分類される。テレビ・新聞・雑誌などの「オールドメディア広告」と、「インターネット広告」、「プロモーションメディア広告」だ。
プロモーションメディア広告とは、屋外や交通機関、折込チラシ、DMといった、従来型の広告のことを指す。2023年のプロモーションメディア広告の規模は約1兆6,000億円と、広告市場全体(約7兆3,000億円)の約23%を占める。増加するインターネット広告や、減少傾向にあるオールドメディア広告に対し、意外にも横ばいを維持する安定した市場だ。
このプロモーションメディア広告のなかでも、屋外看板や交通機関の広告を「OOH(Out Of Home、屋外広告)」と呼ぶ。プロモーションメディア広告のうち約25%(4,300億円)のシェアだ。
この「OOH」がいま、「DOOH」(Digital Out Of Home、デジタル屋外広告)、つまりデジタルサイネージに置き換わりつつある。
23年の統計では、DOOHはOOH4,300億円のうち約800億円(約18%)だが、27年には約1,400億円(約32%)と約1.75倍に増える見通しだ。
市川「日本でのデジタルサイネージの認知度はまだ低いですが、世界的には大きく成長しています。世界市場全体では、OOHに占めるDOOHの割合は約30%(約1兆8700億円)と推定されています。
特に、米国と中国で普及が進んでおり、米国ではOOHに占めるDOOHの割合は約30%(約3,900億円)で、2026年には40%になるとの予測もあります。中国でも、DOOHのシェアは30~40%前後(約4,700億円)とみられ、北京・上海などの大都市では、すでに半数近くがデジタル化しているとする推計もあります。
EV(電気自動車)もそうですが、日本は世界の潮流から少し遅れてついていく傾向があり、DOOHもまさにその流れに乗っていると私はみています」
この市川社長の指摘には、説得力が感じられる。同社は日本でのEV普及の動きを見定め、2023年、独自開発した超高速EV充電器「FLASH」を市場投入し、「EV充電器投資」をスタートした。
実績は右肩上がりで、商業施設や公共機関などに設置が進み、昨年は100ヵ所、今年も200ヵ所に設置予定。2030年までに1万ヵ所にまで広げる計画だ。
「デジタルサイネージ市場」拡大が確実なワケ
デジタルサイネージが日本でも普及拡大していく背景について、さらに詳しくみていこう。世界的な潮流とともに、市川社長は大きく次の3つの理由をあげる。
市川「第1は、デジタルサイネージに掲載する動画制作のコストが圧倒的に安くなったことです。動画作成AI『SORA』に代表されるように、デジタル動画が無料で誰にでも簡単につくれるようになりました。もちろん人の手による修正は必要ですが、基礎的なものはつくれます。
また、デジタルサイネージはLEDを採用しており、テレビのような鮮明な動画を流せるほか、紫外線によるモニターの劣化を抑える技術が進み、寿命が大幅に伸びました。屋外に設置する設備として、これは非常に大きなポイントです。
最後に、IoTです。デジタルサイネージがインターネットと接続され、遠隔から動画の切り替えや更新などが柔軟にコントロールできるようになりました」
さらに、従来の屋外看板は地域ごとに業者が寡占化しており、新規の市場参入が困難だったが、デジタルサイネージは新市場のため参入障壁が低い。
これらの諸条件が整ったことで、日本でもデジタルサイネージ市場が急速に伸びていくことが確実視されている。
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「デジタルサイネージ」は投資家にとって“ブルーオーシャン”
デジタルサイネージ市場の拡大は、投資家にとって新たな投資チャンスの到来を意味する。
市川「都市部はもちろん、郊外にも空き地がたくさんあります。そこに自身で看板を立てて広告を取ることができるとすれば、不動産賃料のような安定した収入が得られることが想像できるのではないでしょうか。
しかも、アナログ看板は基本的に1つの看板に1社しか掲載できませんが、デジタルは分割できます。仮に1回15秒の広告枠を設定すれば、1分間に4社の広告動画を流すことができます。組み合わせ方も多様で、5分間で15秒の広告を20社流すことも可能です。時間枠を細分化することで、柔軟に広告収入を増やすことが叶うのです」
こうしたデジタルサイネージ市場の将来性に着目し、テンフィールズファクトリーは独自のデジタルサイネージ投資サービスの提供を始めた。
投資プランは2タイプある。1つは、投資家がデジタルサイネージを購入し、運営も投資家自身が行うというもの。
市川「たとえば、土地や建物を所有する不動産オーナーの場合、自らデジタルサイネージを購入して設置し、そこに入居者募集などの自社広告を出してもいいですし、地域の飲食店や企業から広告を出してもらうこともできます。
ただしこのタイプの場合、大きな収益が期待できるものの、営業力や動画編集スキルが求められます。広告スポンサーが見つからなければ、収益はマイナスになる可能性があります。また、この場合は投資家が自分でビジネスを手がける形になるため、個人投資家には大きな負担になる可能性があります」
こうしたリスクを低減するために、同社は2つ目のプランを用意している。
市川「当社がデジタルサイネージを設置する土地をご紹介し、投資家にはサイネージのみを購入していただき、当社がその広告枠を毎月購入するという投資モデルです。
広告枠の購入額は、サイネージの販売価格に対して、投資利回りが30%になるように設定します。第1プランに比べて、投資家が得られる利回りは固定されますが、リスクを大幅に低減できるメリットがあります」
テンフィールズファクトリーが、自社のリスク覚悟でサイネージの広告枠を買い取るのはなぜなのか。
市川「当社は飲食業をはじめさまざまな事業を展開しているので、その宣伝ツールとして活用できます。また、当社の営業力と多彩なネットワークを生かし、広告主を集めることもできます。つまり、投資家から購入したサイネージの広告枠を再販するというスキームです。
たとえば、800万円の大型サイネージを投資家に購入していただき、当社が広告枠すべてを月20万円(年間240万円)で買い取るとします。これで投資家は『利回り30%』を確保できます。そして当社でその広告枠を分割し、1枠3万円で20社に販売すれば、当社の売り上げは月60万円となり、ビジネスとして成立するのです」
「デジタルサイネージ投資」の収支シミュレーション
具体例として、第2プラン(利回り30%)の収支シミュレーションを見てみよう。まず、三重県鳥羽市で進められている800万円の大型のサイネージを購入するという案件。
先ほど市川社長が自社の売り上げシミュレーションで挙げた事例だが、実際にテンフィ―ルズファクトリーが紹介した空き地にサイネージを設置し、同社が広告枠をすべて買い取る。5年契約で、投資家は毎月20万円(年間240万円)の収入が得られ、年間利回りは30%となる。サイネージの減価償却は3年だ。
また、なかにはもう少し気軽に投資できる小型の案件もある。都内の整体院にデジタルサイネージを設置するケースの場合では、サイネージの購入費用は80万円だ。5年契約で、テンフィールズファクトリーが広告枠をすべて買い取る。整体院の収入は月額2万円(年間24万円)で、利回り30%、サイネージの減価償却は3年となっている。
不確実性高まるなか「デジタルサイネージ」が“救いの一手”となるか
世界的に拡大するデジタルサイネージ市場。今回みてきてわかったように、その波は日本にも着実に押し寄せてきている。
市川社長は「デジタルサイネージ市場はこれから確実に伸びると見ています。投資家のみなさまと一緒に新しいマーケットを創出できればと考えています」と抱負を語る。
世界を取り巻く地政学リスクや米トランプ政権の関税政策など不確実性が高まるなか、デジタルサイネージ投資をポートフォリオに加えることを検討してみてはいかがだろうか。
市川 裕
テンフィールズファクトリー株式会社
代表取締役
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