「その値付けは正しいか」知識と情報が不可欠
しかし、現実には、聞かないまま広告に出す不動産業者がいます。中には私たちが管理している物件情報を無断転載する業者もいます。お客さまが欲しいからでしょう。怒られる覚悟で反響を取ろうとしているわけです。
そんな会社が数社あれば、それだけでも物件情報がずらっと出てしまいます。そして、同じ物件が3つ程度出ていると、「この物件は広告掲載がOKなんだ」と、情報が一人歩きして、知らないところでも売り情報で出てしまうこともあります。
これがまだ賃貸の客付けであれば、情報が拡散されても良いのですが、物件の売り情報が、「たくさん出ていること」「長く出ていること」は前述したように売却に不利になる可能性がありますので、不安のない売却を進めるためには極力避けたほうが良いでしょう。
ただし、これは売却を希望する方から見て、「宣伝してくれて、ありがとう」となるか、「今すぐ止めてください」となるかの受け取り方の違いがあります。
本来なら、最初の段階で「ポータルサイトに出すか否かという打合せをすべきですし、出す場合でも「1カ月間出してレスポンスを見て、金額を調整しよう」といった戦略を立てて行います。
それを漫然とポータルサイトやレインズ(不動産業者間ネットワーク)に載せっぱなしにしていれば、すぐに「売れ残り物件」として見られてしまうのです。
いずれにせよ、売りたいタイミングや価格で売却するためには、情報をどのように出すかのコントロールは非常に重要です。それを知らずに「情報を拡散すべきだ」と勘違いしている売主さんが本当に多いですし、不動産会社もその点を深く考えていないケースが多いと思います。
■知識がなければ売却で成功はできない
売却を考える際は戦略的に、協力的な業者とタッグを組む必要があります。
例えば、物件を購入する場合でも「利回り15%の物件がいい」と思っても、なかなか思い通りに物件が出てくることはありません。
もちろん、本来なら利回り10%の価値がある物件を15%で買えるならいいのですが、15%の価値の物件を15%で買っても得ではありません。その価値がわからなければジャッジができないということです。
売却でも同じで、「その値付けが正しいか・正しくないか」という判断は、ある程度の知識や情報量がないとできません。
例えば、ホテルのラウンジのコーヒーが1杯1000円だとして、それを高いと思う人も多いかもしれません。
しかし、都内の一等地にあり、しかもお代わり自由だったらどうでしょうか。90分いてコーヒーを2杯飲めれば、実質的には1杯500円になります。一般的なカフェの価格と大差ありません。しかも静かでゆったりとした場所で過ごせるため付加価値もあります。
このように「コーヒーが1杯1000円」でも、価値がわかっていれば、「この価格は適正だ」と思えるのです。つまり、高ければ良いということでもありません。
相場からかけ離れた金額を出し続けて、ずっと売れなかったら本末転倒です。いつまで売りたいのか、いくらで売りたいのか、世の中の市況はどうなのか、買い手のニーズはどうなのか、など複合的に物事を考えて判断する必要があります。
理想論を言えば、売主さんがそこまで考えなくても、不動産会社がすべて考慮してくれればいいのですが、業者といっても能力や姿勢はバラバラなので、売却する側も最低限の知恵をつけなければ、うまくいかない可能性が高まります。
こうしたことを踏まえて、速く、高く、不安のない——売却で失敗しないために最低限知っておくべきノウハウを明らかにしていきます。
新川 忠義
株式会社クリスティ代表取締役
富士企画株式会社代表取締役
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