持ち家があれば老後も安心!?
「持ち家があるから老後も安心」このような考え方も間違いではありませんが、実際はそうでないケースも多く存在しています。順風満帆と思われていた余生が「消極的な選択」によって賃貸生活を強いられることがあります。今回は将来起こりうる事態に備えるため、Aさんの事例から、いまからできる具体的な対策について考えます。
一般的に高齢者に対する賃貸市場での風当たりは厳しいものです。連帯保証人の有無・緊急連絡先の確保・有事の対応体制などが求められます。賃貸生活が悪いわけではありませんが、終の棲家を手放す状況に陥らないための準備をいまから始めましょう。
所有の喜びと管理の重み
Aさん(70代後半)は、2年前に夫を亡くし、月13万円の年金収入で、50年前に建てたマイホームで一人暮らしをしていました。Aさんには、近くに住む50代の長男夫婦(孫2人)と、遠方に住む同じく50代の長女夫婦(孫1人)がいます。どちらの子どももすでに住宅を購入しており、長男夫婦とその孫とは頻繁に会っていましたが、長女家族とは距離があるため、なかなか会うことができずにいました。
Aさん宅はAさんが60歳のときに大規模なリフォームを行い、快適な生活を送っていましたが、最近お風呂で滑って転倒する事故がありました。そこで、Aさんは自分の年齢に見合った設備に変更しようと再度リフォームを決意し、長男に相談しました。しかし、長男からは「お母さんの好きにすればいいよ」と、少し他人行儀な返事が。長女にも相談しましたが、反応は同じでした。
Aさんは、子どもたちがこの家に関心がないことを思い知らされ、少し寂しい気持ちになりました。思えば、この家は亡くなった夫と2人で夢と希望をもって建てた家。柱に残る背比べのしるし、お正月にみんなで人生ゲームをした和室、家族揃って夕食を囲んだ食卓……。すべてが大切な思い出です。2人の子宝にも恵まれ、子どもたちも巣立ち、新しい家庭を築いている。自分も同じようにしてきたことなのに、Aさんの心にはぽっかりと穴が開いてしまいました。
そこでAさんは、いままで相続のこと・家のことについて、子どもたちと話をしてこなかったことに気づかされます。
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