(※写真はイメージです/PIXTA)

年齢とともに高まる「健康リスク」。異常気象の影響で不安定な天候が続く状況の続くなか、高齢者の突然死も増えています。家族による事前の備えは欠かせません。万が一、なんの備えもせずに家族が突然亡くなってしまった場合、残された子どもや配偶者はどうなってしまうのでしょうか。本記事では、中村さん(仮名)の事例とともに、現実に起こり得る家族の問題と、遺品整理や空き家管理の現状、そして事前の対策について、波多FP事務所の代表ファイナンシャルプランナーである波多勇気氏が解説します。

突然の訃報がもたらした衝撃

中村裕一さん(仮名/45歳)は、都市部で働く会社員です。妻と中学生の娘が2人おり、親とは別居。裕一さんの父親、中村義昭さん(仮名/71歳)は、九州にある築60年の実家で、3年前に妻を亡くして以来、1人暮らしをしていました。しかしながら、今年の異常な暑さによって熱中症になり、それが原因で急死してしまったのです。

 

義昭さんが突然亡くなり、裕一さんは急いで実家を訪れました。裕一さんの下の娘は生まれつき身体が弱く、九州への遠距離移動となると大きな負担になるため、父親のことは心配しつつも、様子を見に行くことがあまりできませんでした。そのせいか、あっけない最期に実感が湧きませんでした。母親の葬儀後の2年前に一度訪れていましたが、実家には、久しぶりに足を踏み入れます。

 

変わり果てた実家

実家は変わり果てていました。義昭さんの部屋には、義昭さんが生前大切にしていた趣味の道具や古い家電、物置のように積まれた不要な雑貨で溢れていたのです。母親と2人暮らしだったころは、こんなに家が散らかっていることなど一度も見たことがありません。ショックを受けながら、手入れされていない実家を見て回るなかで、トイレのきしむ扉を開けて、「うわあ!」と思わず大声で叫んでしまいました。

 

便器にはべっとりとこびりついた汚物、壁は変色し、ひび割れやカビが広がり、修繕が必要な状態になっていたのです。

 

「こんな状態になっているとは思わなかった……」裕一さんはしばらく立ち尽くしていました。

 

死後の手続きについてなにも相談できないまま亡くなった父親。物置のような状態の部屋。修繕しなければ使い物にならないトイレ。なにから手をつければよいのか、途方に暮れてしまいます。

 

とはいえ、このままいつまでも呆けているわけにはいきません。裕一さんに兄弟はおらず、父親である義昭さんが住んでいた実家は、必然的に裕一さんが管理することになります。不幸中の幸いというべきか、課題そのものは明確でした。

 

まずは遺品の整理。次に老朽化した家の修繕。そして今後の維持管理方法です。裕一さんは、これらの山積みになっている課題を、ひとつずつ解決していくほかありません。

 

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