「余裕の老後」が送れると考えていたが…
Aさん(67歳)は、大学卒業後より40年以上にわたり勤め上げた会社を2年前に定年退職し、5歳年下の妻Bさん(62歳)と大学生の息子の3人で、埼玉県の戸建て住宅で暮らしています。成人した長女(29歳)もいますが、すでに結婚し、東京郊外で夫と子どもと住んでいます。
Aさんは謹厳実直な性格で、これまでの人生で贅沢をしてお金を散財することもなければ、お金がかかる趣味を持ったこともありません。家族を愛し、家族の幸せを常に考える、よき父、よき夫でした。
定年退職をするにあたり、Aさんは「退職金1,500万円を含めた貯蓄が2,500万円ある。今後は年金も入るし、Bも65歳まで今のパートを続けるといっている。退職祝いに家族みんなで海外旅行くらい行ってもバチが当たらないだろう」と考えていました。
その他、住宅ローンの返済や自宅のリフォームなど、「必要最低限」のことに退職金は使うこととし、退職後の家計収支については特に深く考えることなく老後生活に突入しました。
「思わぬ支出」が重なり、たった2年で貯蓄が大幅減
Aさん夫婦はまずは、30年余り暮らした自宅のリフォームがてら、介護が必要になった場合に備え、室内のバリアフリー化の工事、そして大型家電や自家用車の買い替え、さらに、あと3年残っていた住宅ローン約400万円の返済、そのほか家族で海外旅行と、当初予定していた通りに退職金を使いました。
しかし、昨今の物価上昇でリフォーム費用も旅行費用も、Aさんがなんとなく想定していた以上に高額となってしまい、その結果、この約2年間であれよあれよと、退職金を含めた貯蓄残高が500万円まで減ってしまったのでした。
ここに、さらなる追い打ちをかけたのが、子どもたちの想定外の出費。
まず、地元の理系私立大学に通学していた長男(23歳)が、卒業を前に昨年1年間留年してしまいます。学費は、本人がアルバイトで稼ぐといったものの、親として黙ってはおれずに、約80万円の出費です。
また、長女が昨年離婚したため、娘と孫の当面の生活費などで、100万円以上の出費です。夫婦は娘の生活が落ち着くまで、さらに援助は必要と考えていました。
Aさんは、一気に減った預金通帳の残高を見て、退職金を自由に使い過ぎてしまったことを激しく悔やみました。そしていまさらながら今後の生活が心配となり、FPに相談に訪れたのでした。