菓子店を経営する父が病に倒れたことから、事業を引き継ぐべく奔走する2代目社長ですが、問題は山積。商品製造は現場で理解し、経営は地域の青年会議所に加わり、出遅れた分を取り戻そうとがむしゃらに学びます。そんな目まぐるしい日々を送るなか、北海道の老舗菓子店が廃業することになり、一部商品の引継ぎを打診されました。病床の父は、判断を2代目に託します。

窮地を救った突然の提案

会社では、新商品の焼カシューができたことが大きな成果でした。しかし、世の中のニーズに完全にマッチしていたかというと、そうではありませんでした。すすきのの飲食店では、相変わらず安くて気軽に食べられるおつまみが求められていました。

 

バターピーナッツと焼カシューの1キロあたりの価格は、バターピーナッツが500円、焼カシューが1000円以上です。そのため、焼カシューの味を評価し、独創性や新しさを面白がってくれるお客さんもいたのですが、注文はなかなか増えず、売り上げ面でもバターピーナッツの足元にも及ばない状況が続いたのです。

 

思わぬ出会いに恵まれたのは、このような苦境に立たされている時でした。札幌菓子製造組合の仲間で、父と交流が深かった橋本製菓の社長から「タマゴボーロの事業を継承しないか」と打診を受けたのです。

 

北海道では、札幌の橋本製菓が道内唯一のボーロのメーカーで、道産の馬鈴薯(じゃがいも)でんぷんを100%使用した「ハシモトのタマゴボーロ」は、添加物を一切使わない、子どもに人気の菓子の一つでした。橋本製菓は大正時代から菓子作りを続けている会社です。その会社が廃業することになり、タマゴボーロの製造を引き継いでほしいと声が掛かったのです。

 

話を受けた父は、病気の状況から自分で製造現場を取り仕切ることは難しいと考えて、この話の判断を私に任せました。経営者として初めて、私は会社の未来に関わる大きな判断を任されることになったのです。

 

 

池田 光司
池田食品株式会社 代表取締役社長

 

 

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