菓子店を経営する父が病に倒れたことから、事業を引き継ぐべく奔走する2代目社長ですが、問題は山積。商品製造は現場で理解し、経営は地域の青年会議所に加わり、出遅れた分を取り戻そうとがむしゃらに学びます。そんな目まぐるしい日々を送るなか、北海道の老舗菓子店が廃業することになり、一部商品の引継ぎを打診されました。病床の父は、判断を2代目に託します。

付き合う人が変わると目線も変わる

ピーナッツからカシューナッツへ軸足を移すことのほかに、私には別の課題がありました。それは、次期経営者として経営を学ばなければならないという課題です。

 

現場のことは少しずつ学びつつありましたし、カシューナッツの取り組みを通じて現場とのコミュニケーションも取れるようになってきました。しかし、それは目の前の課題をどうするかという話に過ぎません。少し先を見据えると「これから会社はどこへ向かうのか」「どこを目指し、何を実現するのか」といったことを決めなければなりません。それが私の役割なのですが、戦略はなく、戦略化できそうな案もなく、そもそも経営について学ぶ機会もなかったのです。

 

そこで私は地域の青年会議所に加わることにしました。青年会議所は、20歳から40歳までの経営者や次期経営者などの有志が加入できる団体で、業種の壁を超えた交流によって知識と意識を高め、未来のリーダーとして必要な素養を身につける場です。メンバーには私のような二代目も多く、視野を広げ、視座を高めるために絶好の場になるだろうと思いました。

 

会議所での活動は学びであり交流ですので、業務とは直接的には関係しません。青年会議所の活動を頑張ってもすぐに売り上げが伸びるわけではないのです。むしろ、会議所での活動に時間や労力を使うことで、現場の業務に携わる時間は減ります。

 

事業の足元がおぼつかない中で、勉強していて良いのだろうか。現場を離れる時間が増えて、業績がさらに悪化するのではないか。そのような不安はありましたが、それでも私は入会を決めました。現場のことは、工場長をはじめとする現場の従業員が分かっていますし、私が現場に張り付いてもできることは限られています。それなら、私は私にしかできないことを考え、私にしか果たせない役割に集中したほうが良いと考えました。

 

父の病気のことを考えると、のんびり構えている時間はありません。二代目経営者として会社の未来を作り出していくために、独り立ちに向けた助走をすぐにでも始めなければならないと思ったのです。

 

こうして1981年、32歳だった私は札幌青年会議所に入会しました。これには大きな収穫がありました。会議所のメンバーは皆、未来に目線を向けています。今風に言えば「意識が高い人」ばかりでした。私より年下のメンバーもたくさんいましたが、どういう社会を作りたいか、地域のどのような課題を解決できるかといったことを真剣に考えています。彼らと接して、私は「自分たちの力で社会を変える」という彼らの意欲とエネルギーに圧倒されました。

 

自分が20代のころを思い出すと、東京の商社でそれなりに一生懸命働いていましたが、社会課題や地域貢献のことなど考えたことはありませんでした。当時は土曜日もお昼ごろまで働く「半ドン」が一般的で、15時くらいになると同僚と居酒屋に行き、日本酒を飲みながら愚痴などをこぼしていた時もありました。それはそれで、束の間の息抜きとしては楽しい時間だったのですが、会議所のメンバーとは目線も意識も大きく違っていたなと反省しました。どんな意識を持つかによって行動は変わるものです。誰と付き合うかによって意識も変わります。国内はむろん海外の人々との交流について話を聞いたり、社会システムについて議論を交わしたりするなど、実に多くの体験ができました。

 

同年代や若い世代で、リーダーとなるための努力を積み重ねている人がいることを知り、私は焦りを感じました。同時に、彼らとの交流から学び、二代目として出遅れている分を少しでも早く取り戻そうという意欲も高まったのです。

 

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小さな豆屋の反逆 田舎の菓子製造業が貫いたレジリエンス経営

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池田 光司

詩想社

価格競争や人材不足、災害やコロナ禍のような外部環境の変化によって多くの中小企業が苦境に立たされています。 創業74年を迎える老舗豆菓子メーカーの池田食品も例外ではなく、何度も経営の危機に直面しました。中国からの…

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