経営再建に向け疾走する、北海道の豆菓子店二代目社長。しかし、従業員からの「我々が作っている豆菓子って、名前が出ませんよね」「子どもに『お父さんが作っているお菓子はどこに売っているの』と聞かれました」という言葉に愕然。「我々は何のために存在し、何を大事にする会社なのか」――。そう考えたとき、見えてきたものがありました。

何を大切にする会社なのかを問う

「社長、我々が作っている豆菓子って、名前が出ませんよね」

 

「名前ですか。問屋さんやメーカーさん向けの仕事ですから、我が社の豆菓子であると知っている人はかなり少ないと思います」

 

「そこって、どうにか変えられませんか」

 

従業員たちとのこの会話を境に、私は会社のあり方について考えるようになりました。あり方は、会社の存在意義や存在している価値のことです。事業の内容や事業モデルといったことではなく、もっと根幹にある命題として、私の会社は何のために存在しているのかを考えるようになったのです。

 

当社は赤字を脱出し、問屋のなかではよく知られた会社になりました。大手メーカーにも評価され、仕事量が増えています。これも良いことです。しかし、一方で実際に商品を口にする消費者にはほとんど知られていません。OEMでメーカーに信頼される会社を目指すのであれば問題ではありませんが、OEM主体の会社を目指していないのであれば、これは問題と言えます。

 

我々は何のために存在し、何を大事にする会社なのだろうか。その答えを考えたとき、私は、味、地元、お客さん、そして従業員が全て同等に大事だと思いました。このうちの一つでも欠けてはいけません。現状として、味、地元、お客さんは大事にできていますが、従業員はやりがいを感じていません。忙しさの中に充実感や達成感を感じられず、ただただ疲労感が積もっています。いくら赤字を脱出した結果の姿とはいえ、改善すべきことに間違いありませんでした。

 

この問題の解決策は一つしか思い浮かびませんでした。自社ブランドを作ることです。

 

従業員が「自分たちはこれを作っている」と自慢でき、かつ、味が良く、地元に貢献でき、お客さんが満足してくれる自社ブランドの商品を作れば、四方全てうまくいきます。

 

その視点で会社の状況を見渡してみると、継続して新商品開発に取り組んできたこともあり、自社ブランドの商品を作り出す力はありそうだと思いました。

 

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小さな豆屋の反逆 田舎の菓子製造業が貫いたレジリエンス経営

小さな豆屋の反逆 田舎の菓子製造業が貫いたレジリエンス経営

池田 光司

詩想社

価格競争や人材不足、災害やコロナ禍のような外部環境の変化によって多くの中小企業が苦境に立たされています。 創業74年を迎える老舗豆菓子メーカーの池田食品も例外ではなく、何度も経営の危機に直面しました。中国からの…

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