従業員の責任感とプロ意識を伸ばした、決定的な出来事
会社と商品がお客さんに認知されていくなかで、社内でも変化が起き始めます。ある時、休憩室のテーブルの上に商品が開封済みの状態で置いてあるのを見かけました。試食用の豆菓子は包装していませんので、袋入りのその商品は、店舗で買ってきたものです。
「工場でいくらでも手に入る豆菓子を、なぜ店で買ってきたのだろうか……」
不思議に思って近くにいた従業員に聞いてみると、実際に売られている商品の味を確認するために工場の従業員が買ってきたのだと分かりました。
豆菓子は、菓子類の中でも比較的日持ちします。しかし、工場で試食する出来立てのものと比べると、包装し、店舗に出している商品は、もしかしたら味が落ちているかもしれません。それを確かめるために、わざわざショップへ行き、買ってきたというわけです。このような行動は、OEM仕事のころには見られませんでした。
メーカーに納品した後、どこで、どのような形で流通するか分かりませんでしたし、そもそも納品後の商品について関心が薄かったため、味を確認してみようという思いに至らなかったのです。
別の言い方をすれば、OEM仕事で社名が表に出ないことが、味に対する責任を持たなくて良いという口実となり、隠れ蓑になっていたということです。その意識が確実に変わったと、私はこの時に気がつきました。
自社ブランドは社名が表に出ます。「美味しい」「美味しくない」といった評価が会社と商品の評価に直接影響します。そのことを現場の従業員が理解したことにより、私の会社のブランドはもっと成長し、もっと強くなるだろうと思いました。従業員のモチベーションを高め、やりがいを作り出すための取り組みは、彼らの責任感とプロ意識を伸ばすことにつながっていったのです。
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