「自慢の地域の自慢の食材で、自慢できる商品を」北海道豆菓子店2代目社長、満身創痍でたどり着いた境地

「自慢の地域の自慢の食材で、自慢できる商品を」北海道豆菓子店2代目社長、満身創痍でたどり着いた境地

「我々が作っている商品、名前が出ませんよね」…従業員の言葉で自社ブランド確立を決意した北海道の豆菓子店2代目社長。得意とする「コーティング技術」を武器に、次々と試作品に取り組みました。社内には活気が戻りましたが、次は商品を安定的な売上へと結び付けなければなりません。

得意とする技術を駆使し、商品の「味と触感」を追求

工場ではさっそく自社ブランドの商品作りがスタートしました。ものづくりにおいては、ブランド力の源泉は技術力です。

 

私の会社が誇れる技術はコーティングです。豆菓子類もタマゴボーロもかりんとうも、全てコーティングが必要ですし、コーティング技術があるから成立しています。これをブランド作りの武器として、試作に取り組みました。OEMに投じていたヒト、機械、時間の余裕を生かして、次々と試作品を作ります。

 

バターピーナッツに代わる商品を作ろうと取り組んだ時と同様、工場だけでなく、営業もオフィスのメンバーも参加して、我が社らしい味と食感を追求しました。この一体感が中小企業の良いところです。

 

試食のメイン会場となった本社の会議室では、従業員がいつも楽しそうに試食していました。その表情を見るだけでも、自社ブランド作りに舵を切って良かったと感じました。従業員たちも、仕事のやりがいを取り戻しつつありました。目先の作業に追われやすい中小企業こそ、やりがいの創出が大事なのだと理解しました。

「北海道産の材料で新しい菓子を作りましょう」

社内の活気が戻ったところで、次は売り上げをどうにかしなければなりません。OEMをやめると決めた時、すでに赤字は覚悟していましたが、赤字と黒字を行ったり来たりする会社では社員も取引先も心配します。外部環境の変化によって多少の売り上げの増減は避けられないとしても、影響を受けにくくするための対策はあるはずです。

 

売り上げを安定させるにはどうすればよいか、自分たちの強みは何か、売れる商品の条件は何か、参入障壁を作るにはどうすれば良いか、そういったことを考えて、私は地域の材料を使うことに注目しました。北海道の原材料を使い、北海道の味を作り出す、北海道の企業であることを前面に打ち出すことで、これから肩を並べることになる数多の競合他社と差別化できるのではないかと考えたのです。

 

現状、タマゴボーロは北海道産の馬鈴薯を使用していますが、その他の豆菓子は輸入品の原材料を使っています。カシューナッツやアーモンドなどのナッツ類は基本的に暖かい地方が産地ですので、道内で調達するのは困難です。最近は芽室町で落花生栽培が始まっていますが、当時は北海道産のピーナッツはありませんでした。

 

しかし、道内にはほかにもさまざまな材料があります。例えば、大豆の生産は47都道府県のうち北海道がトップです。小麦の生産量も圧倒的1位のうえ、砂糖の原料になるビート(甜菜)は北海道だけの特産品で、馬鈴薯などから作るでんぷんもあります。このような環境で菓子作りができることは、メーカーとして大きなアドバンテージです。流通面で本州メーカーを牽制するよりも、圧倒的に価値がある地の利です。これを生かさない手はありません。

 

「北海道産の材料で新しい菓子を作りましょう」

 

新商品開発チームにそう呼びかけて、私たちは北海道の企業として独自性を打ち出していくことにしたのです。北海道の人は、他の都府県の人と比べて地域愛が強いと言われます。実際、北海道の豊かな自然を誇りに感じている人は多く、私自身も北海道が好きです。その思いがあるため、北海道の食材を生かすというコンセプトがきれいにマッチしました。

 

自慢の地域でとれる、自慢の食材を生かし、自慢できる菓子を作るという流れができ、菓子作りの情熱が高まっていくことになったのです。

 

 

池田 光司

池田食品株式会社 代表取締役社長

 

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