話が違うじゃない…20年間一緒に暮らしてきた亡き親友から「預金の全額を差し上げます」というメモを渡された73歳女性、相続発生後に“一銭”も受け取れなかったワケ【相続の専門家が解説】

話が違うじゃない…20年間一緒に暮らしてきた亡き親友から「預金の全額を差し上げます」というメモを渡された73歳女性、相続発生後に“一銭”も受け取れなかったワケ【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

通常の場合、血縁関係者以外が「相続」に関与することはできません。では「遺言書」や「メモ」等によって生前に被相続人が意思表示をしていた場合は、どうなるのでしょうか。本記事では、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が事例をまじえて、生前のメモと遺言書の違いについて詳しく解説します。

知人同士で同居

敦子さん(73歳・女性)からお電話がありました。敦子さんと同居してきた薫さん(75歳・女性)が亡くなり、困っているといいます。

 

敦子さんは独身で、仕事をしながらひとりで生活してきましたが、趣味の関係で薫さんと知り合って二人暮らしをするようになって20年近いといいます。二人の関係は親友と言ってもいい関係でした。

 

薫さんは夫と離婚し、一人娘はいるのですがすでに独立していて、お互いに一人暮らしということから、一緒に住みましょうとなったようです。

薫さんの介護

薫さんはここ数年体調がすぐれず、検査すると手術が必要な病気だとわかりました。入退院を繰り返しながら、その間は、ずっと敦子さんが献身的に介護をしてきました。

 

薫さんの娘はかなり離れた地域に嫁ぎましたので、ほとんど来ることもなく、介護は敦子さんが一人でしてきたと言います。

 

そうしたこともあり、薫さんは実の娘よりも一緒に生活してきた敦子さんに頼り、感謝してきたといいます。

預金は敦子さんに

薫さんは亡くなる数か月前に娘を呼び寄せ、敦子さんがいる前で、「預金の全額を敦子さんに差し上げます」と書いたメモを見せたと言います。

 

ずっと身近なところで支えあってきた敦子さんにお礼をしたいということです。薫さんの娘は母親の遺志であればと了解してくれたのです。

 

敦子さんの預金は1,200万円ほどありました。普段の生活は二人の年金を出し合って、家賃や生活費を負担してきましたので、その預金を切り崩さなくてもやってこられたのです。入院や手術などで数年間は支出がかさみましたが、その残りで1,200万円でした。

遺言書にしていなかった

娘が快く賛成してくれたので、薫さんはそのメモでよしと思い、遺言書にはしていませんでした。

 

その後、薫さんが亡くなり、敦子さんはそれまで預かっていた預金通帳をいったん娘に渡したのです。そして、薫さんの遺志のとおり、1,200万円を渡してもらいたいと娘に言いましたが、娘は「預金は凍結されて下ろせない」などと言って、もう半年もそうした説明です。

 

困った敦子さんはいろいろと本を読んでみたところ、相続人が一人なのに預金を下ろせないのはおかしいと気が付いたようで、どうしたらいいかというご相談でした。

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