複雑で難しい日本の年金制度。ときに注意書き程度のルールによって、想定外の事態に直面することも。なかには「思っていたよりも年金が少なかった」という、非常事態に遭遇するケースもあるようです。
「年金月21万円」だったが…70歳男性「年金月30万円」に増額で歓喜も一瞬、年金事務所で絶句「年金を繰り下げても意味ないじゃん!」 (※写真はイメージです/PIXTA)

60歳定年サラリーマン、8歳年下の妻も定年を迎えるまで働く決意

池田博さん(仮名・72歳)。年金制度の難しさを感じたひとりです。妻・美登里さんは8歳年下。博さんのほうが先に60歳で定年を迎えますが、そこで仕事を辞め、働く美登里さんを支える……イメージが湧きませんでした。趣味らしい趣味もないので、仕事がなくなったら何をしたらいいのか。そんなことも頭をよぎりました。60歳で仕事を辞めず、再雇用制度で働き続ける、というのが自然の流れだったといいます。

 

――勤めていた会社では定年後も65歳まで働けたんだけど、途中から70歳まで延長されて。当然、やることがないから、とりあえず、妻が定年を迎えるまでは、私も働くことにしました

 

収入は夫婦で月60万円以上になり、十分暮らしていくことができました。そのため博さんは65歳を迎えても年金を受け取ることはなく、「繰下げ受給」を選択することに。

 

「年金の繰下げ受給」は、通常65歳から受け取ることができる老齢年金の受給開始時期を遅らせる制度。66歳から75歳の間に受給を開始することが可能で、受給開始を遅らせることで、受給額が増額される仕組みになっています。その増額率は1ヵ月あたり0.7%増加します。最大で84%の増額が可能であり、これは65歳から受給を開始した場合と比較して、受給開始を遅らせた期間に応じて生涯にわたって適用されます。

 

ただし、1952年4月1日以前に生まれた人は、繰下げ受給の上限が70歳までとなります。これに該当する人は、70歳までの間に受給開始を遅らせることができますが、それ以降は繰下げることができません。最大42%の増額となり、博さんもその対象となります。

 

――ちょうど、妻の定年と同じくして仕事を辞めて、年金を受け取るようになれば、年金は30%ほど増えるとか。65歳から月19万円の年金が受け取れるというから、月25万円弱になる計算。「これはいい」と思いましたね