マンション管理の主体はマンション管理組合
■マンション管理業者の義務
外部に委託する管理業務の種類及び内容などを決めて、これを管理会社に委託する場合、管理組合は管理会社と管理委託契約を締結することになります。法律的には、委託する業務が管理事務である場合又は管理事務を含む管理組合の全般にわたる場合の管理委託契約は委任契約であるといわれています。
管理委託契約を締結した場合、マンション管理会社の義務として、「契約履行責任」と「善管注意義務」が発生します。
契約履行責任義務とは、管理会社は管理委託契約に基づいて、管理組合から委託された業務を契約に定めるとおり履行しなければならないということです。
委託業務の不履行には、履行遅滞、不完全不履行、履行不能とありますが、マンション管理会社の業務不履行の多くは履行遅滞か不完全不履行です。
継続的及び反復的に行う事務管理業務は、履行遅滞が生じやすく、業務の完全な履行を目的とする清掃業務や設備管理業務において生じやすいので、理事は、管理会社から毎月報告される管理委託業務の処理報告をしっかりチェックして履行の確認をしなければなりません。
もうひとつの、善管注意義務とは、「受任者は委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。」と定められています。「善管注意義務」とは、「委任を受けた人の職業、地位、能力において一般的に要求される平均人としての注意義務」をいいます。要するに、マンション管理会社は専門家として注意を払って管理を行うということです。
なお、マンション管理会社は法律で「商人」であるので、商法第505条の適用を受け、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為もすることができるとされています。また、(マンション適正化法第70条)では「マンション管理業者は、信義を旨とし、誠実にその業務を行わなければならならない。」しています。
■管理業務主任者の義務
管理業務主任者は、マンション適正化法に定める重要事項の説明(同法第72条)をはじめ、受託した管理業務の処理状況のチェックやその報告までを含むマンション管理の重要なマネジメント業務を担います。
管理業務主任者の具体的な業務は、次の事項がマンション管理適正化法に定められています。
1)説明会において、区分所有者等に対する管理委託契約の内容及びその履行に関する重要事項の説明(同法72条)
2)重要事項を記載した書面及び契約成立時の書面に対する記名押印(同法第72項第5項、73条第2項)
3)管理者等又は区分所有者等に対する管理事務に関する報告(同法第77条)
以上の項目に抵触しない場合であれば、総会や理事会に出席して、管理組合の依頼に応じて、意見を述べることや、アドバイスをすることは、問題ありません。
平成28年3月に標準管理規約が平成23年7月以来5年ぶりに改正され、管理状況などに関する情報の開示に係る規定が整備されたことを受け、7月に「マンション標準管理委託契約書」及び「マンション標準管理委託契約書コメント」の改正が行われました。
マンション管理業業者が、宅地建物取引業者等からマンションの管理状況など区分所有者が専有部を売却する際に必要となる情報の提供依頼を受けた場合に、開示する情報項目の充実を行いました。
マンション管理の主体はマンション管理組合です。
管理業務を管理会社に委託する場合においても、組合員全員が管理組合を構成して管理を行うものであることには変わりはありません。
管理に関する意思決定は、規約または集会の決議によって行われ、管理者がそれを実行するのであって、その管理者が実行する事実行為としての業務を管理会社に委託するにすぎません。その会社から、100%サービスを受けるとういうだけではなく、組合員もその一翼を担うという気持ちが大切です。
松本 洋
松本マンション管理士事務所 代表
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