74.1%がマンション管理業者に委託
マンション管理業務は、極めて広範かつ複雑で、高度の技術や専門性が必要とされます。革新的な設備設計や新たな設備機器の開発により、マンションの設備は、ますます高度化し複雑化しています。一方、管理組合の役員のほとんどがサラリーマン等、本来の職業あるいは業務に就いているのでマンション管理業務に専念することは極めて困難な場合が多くあります。
また、マンション管理業務は、長期にわたる継続性、安定性があって初めて良好な成果が期待できる性格のものであり、管理組合役員が替わる都度、方式、方針が変わっていては、継続性が担保されないだけでなく良好な環境の整備、円滑なコミュニティの維持や向上が難しくなります。
そこで、管理組合役員の職務の軽減と、毎年役員が変わってもマンション管理の質が変わらないように多くのマンションが管理会社にマンション管理業務を委託しています。平成30年度のマンション総合調査では、全体では、「基幹事務を含め管理事務の全てをマンション管理業者に委託」が74.1%であるのに対して、「管理組合が全ての管理、事務を行っている」いわゆる自主管理は6.8%であります。
■議事録と管理委託契約書
国土交通省から公表されている、「マンション標準管理委託契約書(以下、管理委託契約書という。)」では、別表第1 事務管理業務 2基幹事務以外の事務管理業務 (1)理事会支援業務、(2)総会支援業務の欄にそれぞれ、理事会議事録案の作成・総会議事録案の作成と記載されています。
ですから、管理委託契約書に基づいて、議事の経過の要領及びその結果を記載した管理会社の担当者が作成する議事録は議事録の素案であって下書きです。それを基に議長(理事長)が内容を精査して加筆・修正などし、総会の場合は総会に出席した2名の組合員、理事会の場合には、理事会に出席した2名の理事がこれに署名して議事録が完成します。
総会や理事会の議長は、管理会社の担当者が作成する議事録案を鵜呑みにしないでご自分の頭の中で考えてご自分の文章で作成することが重要です。
議事録の記載については、管理委託契約書のコメントに次のように記載されています。
③理事会及び総会の議事録は、管理組合の活動の重要な資料となることを踏まえ、マンション管理業者に議事録の案の作成を委託する場合は、その内容の適正さについて管理組合がチェックする等、十分留意する。
議事録については、議事の経過の要点及びその結果を記載する必要がある。「議事の経過」とは議題、議案、討議の内容及び採決方法等を指すが、それらの要点を記載することで足り、すべての発言を一言一句記録するものではない。しかし、議事に影響を与える重要な発言は記録することに留意する。
■管理委託契約の内容と認知度
分譲マンションの管理会社と賃貸マンションやオフィスビルの管理会社とでは仕事の内容が全く違います。賃貸マンションの管理会社は、一般的に家賃の集金と入居者の入居時・退去時の立会い等の主に入居者の管理がメインになります。それに対して、分譲マンションの管理会社は基本的にはマンションの共用部分の維持管理と会計報告、長期修繕計画などの理事会対応が主な仕事です。管理の対象やその内容が異なるのです。
分譲マンションの管理会社の管理委託契約内容の認知度ですが、平成30年度のマンション総合調査では、全体では、「だいたい知っている」が58.5%、「よく知っている」が16.8%で、合計75.3%の区分所有者が知っていると回答しています。
入居後の共用部分の維持管理を考慮した程度別では、共用部分の維持管理に対する考慮の程度が高いほど管理委託契約内容の認知の程度が高くなっています。
また、同マンション総合調査の、『管理事務を管理業者に委託することへの意向』の調査の全体では、「任せても良いが、その方針は管理組合で決めるべきである」が74.2%、「マンション管理業者に全て任せた方が良い」が19.5%となっています。
年齢別では、年齢が高くなるほど「マンション管理業者に任せるべきではない」の割合が高くなる傾向があります。