本連載は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。今回は、「健康経営」「多様性」「DX」の3つの視点を、今後の日本株投資に活かす方法について見ていきます。
女性の活用など「多様性」を重視した経営が注目される
東証と経済産業省は共同で、女性活躍推進に優れた上場会社を「なでしこ銘柄」として毎年選定している。なでしこ銘柄は、東証の上場企業のなかから女性が働き続けるための環境整備を含め女性の人材活用を積極的に進めている企業を紹介するものである。
2021年3月には、「女性活躍度調査」に回答した上場企業について、令和2年度「なでしこ銘柄」が選定された。これは、企業価値向上を実現するためのダイバーシティ(人材の多様性)経営に必要とされる取組みとその開示状況について評価し、業種毎にスコアをつけ、上位の45社を選定したものだ(図表1)。
また、2020年12月にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も、外国株においてダイバーシティ指数を新たに選定し、その指数に基づく外国株式のパッシブ運用を開始したと発表。
GPIFは、女性活躍に関する多くの実証研究を取り上げ、ジェンダーダイバーシティに富む企業は幅広い人材プールにアクセスできることなどにより、優れたパフォーマンスを上げる可能性があると示唆。また、マクロ経済の観点から、女性の労働参加率上昇は各国の経済成長を後押しする可能性があるとした。
GPIFは、「積極的に女性を登用する方針を持ち、環境を整備して実績を上げる企業への投資ウェイトを引き上げることで投資先や市場全体の持続的成長による長期的な収益の確保を目指す」と明記するなど、ジェンダーダイバーシティ企業への投資を継続するものとみられる。
さらに、6月に施行された改訂版企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)でも、人材の多様性を重視する姿勢が強まっている(人的投資が企業の持続的成長と中長期的価値の向上につながると明記)。
企業側が人材多様性への取組みを積極化し、また情報発信を強化することで、PER(株価収益率)のプレミアム付与や資本コストの低下に加え、ESG関連ファンドのフローなどを通じて株価の下支えに寄与する可能性もあろう。
東海東京調査センター
投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)
山一證券、メリルリンチ日本証券、損保ジャパンアセット(現SOMPOアセット)などでの富裕層・法人営業に加え、年金基金、投資信託のアナリストやファンドマネージャーとして新興市場やオルタナティブを含む幅広い市場・商品の担当責任者を経て、2016年に東海東京調査センター入社。
現職では短中期の戦術的資産配分(タクティカル・アセットアロケーション)やオルタナティブ投資(ヘッジファンド・テクニカルやコモディティ戦略含む)の視点を踏まえたグローバルな日本株の市場分析等を行う。他の代替資産・戦略としてJリート投資戦略、ESG投資戦略、行動ファイナンス投資戦略などもカバーしている。
英国国立ウェールズ大学経営大学院MBA。アライアント国際大学・カリフォルニア臨床心理大学院米国臨床心理学修士号(MA)。慶應義塾大学商学部卒。国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)、国際テクニカルアナリスト連盟検定テクニカルアナリスト(MFTA)、CFP、英国王立勅許鑑定士(MRICS)、不動産証券化協会認定マスター、中小企業診断士。
日経CNBCなどのTV・メディアに出演。日経新聞、QUICK、ロイター、ブルームバーグ、時事通信、東洋経済オンライン、幻冬舎ゴールドオンラインなどでも執筆、コメントを行う。ヘッジファンド・テクニカルのキャリアとして世界のテクニカルアナリスト協会を束ねる国際テクニカルアナリスト連盟(IFTA)の理事などを歴任。早稲田大学ビジネスファイナンスセンターや同志社大学、青山学院大学等で講師を務める。
著書には投信営業に行動ファイナンスアプローチなどを活用した『会話で学ぶ!プロフェッショナルを目指す人の「投信営業」の教科書』(2021年)がある。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載東海東京調査センター「オルタナティブ投資戦略取材レポート」